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差別化戦略として業界で注目集める洗濯代行 クリーニング業法違反では?と国会で話題に コインの衛生面を懸念する指摘も

 この20 年で施設数が倍増したといわれるコインランドリー。低金利~ゼロ金利~マイナス金利といった近年の経済情勢もあって新規参入が相次ぎ、特にここ数年は驚くほどのペースで増加している。そのため、競合が多いエリアでは差別化が求められるようになり、本来はセルフサービスであるコインランドリーにおいて、店舗スタッフが洗濯と手たたみを行う「洗濯代行」サービスを始めるところも出てきた。

 

 しかし、その洗濯代行に関して、「法律(クリーニング業法)に違反するのではないか」との指摘が、国会でなされた。2017 年2月23 日の衆議院予算委員会井坂信彦衆議員議員(民進党・無所属クラブ=兵庫1区)が質問したもので、厚生労働省の塩崎恭介大臣(当時)と北島智子生活衛生・食品安全部長(同)が答弁した。クリーニング業法に関する指導監督は自治事務となっており、細かな指導内容は都道府県等により異なるが、業界で注目が高まっている洗濯代行について、国会でどのようなやり取りがあったのか、その概要を紹介する(衆議院ホームページの会議録より抜粋掲載)。

 

    ◇    ◇    ◇

 

 井坂信彦衆議員議員(以下・井坂) いろいろアイデアだなと思いますのは、コインランドリーのあいている洗濯機を使って、汚れた洗濯物をお預かりして、そこで洗って乾燥してあげて、畳んで、また宅急便で送り返す、こういうビジネスモデルも今広まってきております。

 

 事務方にお伺いしますが、コインランドリー業者が汚れた衣類を受け取って、洗濯を代行して、畳んで顧客に届けている場合、これは法の定めるクリーニング業に当たりますか。

 

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井坂信彦衆議員議員(画像は全て衆議院インターネット審議中継からのスクリーンショット

 

 北島智子生活衛生・食品安全部長(以下・北島) いわゆるコインランドリーにつきましては、利用者みずからが当該施設に設置された洗濯機等を使用しまして洗濯を行うものであり、そのもの自体はクリーニング業法の適用を受けません。

 

 しかしながら、コインランドリーの利用者から洗濯物を受け取り、当該施設内の洗濯機を使用して洗濯を行い、利用者に引き渡す行為を業として行っている場合は、クリーニング業法の営業者に該当すると考えられます。

 

 井坂 まさにクリーニング業そのものだというふうに思うわけであります。

 

 大臣はこのコインランドリー型のクリーニング業者というのをご覧になったことはありますか?

 

 塩崎恭介厚生労働大臣(以下・塩崎) 業者としてやっているかどうかは知りませんけれども、コインランドリーがあるのはよく見ていることは見ておりますし、アメリカでも、家族寮の中にコインランドリーがあり、どちらかというと洗濯は私の仕事で、女房との間の分業がなされておりましたので、よく使っておりました。

 

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塩崎恭介厚生労働大臣(当時)

 

クリーニング業法 第三条三項五号

 伝染性の疾病の病原体による汚染のおそれのあるものとして厚生労働省令で指定する洗濯物を取り扱う場合(編集部注・その旨の届出が必要)においては、その洗濯物は他の洗濯物と区分しておき、これを洗濯するときは、その前に消毒すること。ただし、洗濯が消毒の効果を有する方法によつてなされる場合においては、消毒しなくてもよい。

・消毒を要する洗たく物とは(クリーニング業法施行規則第一条)

 厚生労働省令で定める洗たく物は、次に掲げる洗たく物で営業者に引き渡される前に消毒されていないものとする。

一 伝染性の疾病にかかっている者が使用した物として引き渡されたもの

二 伝染性の疾病にかかっている者に接した者が使用した物で伝染性の疾病の病原体による汚染のおそれのあるものとして引き渡されたもの

三 おむつ、パンツその他これらに類するもの

四 手ぬぐい、タオルその他これらに類するもの

五 病院又は診療所において療養のために使用された寝具その他これに類するもの

【靴下は指定洗濯物なのか?】

 業法は以上のようになっており、井坂議員から「靴下とか下着とか、そういう消毒が必要な洗濯物――」との発言があったが、靴下が指定洗濯物に当たるのか? とクリーニング業界内で驚きの声が上がった。

 そこで本誌が厚労省に確認すると「靴下が指定洗濯物という認識はない」とのことであった。

 

 井坂 ありがとうございます。なぜお聞きしたかといいますと、実は、議員会館の中にもあるんです、このコインランドリー型のクリーニング業者が。議員会館の地下一階のコンビニがあって、コンビニの横、お土産屋さんがあって、その横に取次窓口があるんです。だから、我々は、気づかないですけれども、議員会館に通っている人はほぼ毎日見ているところにあるわけであります。

 

 こういう業者はいっぱいあるので、やり方に多少違いはあるんですけれども、やはり多いパターンは、専用のバッグを支給されて、そこに詰め放題、詰め込める限り詰め込んで、これでバッグ一つ二千円ですよとか、そういう形で預かるという形になっています。

 

 ここで疑問が生じるのが、クリーニング屋さんは普通、靴下とかは洗ってくれませんよね。なぜかというと、クリーニング業法では、靴下とか下着とか、そういう消毒が必要な洗濯物というのが分けて厳しく規制をされていて、そういうものを取り扱う場合は、消毒したりとか、分けておいたりとか、いろいろやらなきゃいけないことは増えるんです。ですから、普通のクリーニング屋さんはパンツや靴下は洗ってくれないと思います。ところがコインランドリー型のクリーニング屋さんは、バッグ詰め放題という形をとっているがゆえに、みんな入れるわけですね。ホームページを見たって、そういうものを入れる前提のような書きぶりになっております。

 

 そこで事務方にお伺いをいたしますが、このコインランドリー型のクリーニング業者が、下着など法に定める消毒を要する洗濯物を消毒処理せずに洗濯していたり、あるいは消毒を要する洗濯物とそれ以外を分けずに扱っていた場合は、法三条三項五号違反(別項参照)ということになるんじゃないかなというふうに思うんですけれども、この場合はどのような是正指導が行われますか。

 

 北島 議員御指摘のとおり、クリーニング業の営業者は、伝染病の疾病の病原体による汚染のおそれのある洗濯物を取り扱う場合は、その洗濯物はほかの洗濯物と区別し、これを洗濯するときは、その前に消毒することとされております。都道府県知事等は、営業者がこれに違反していると認めるときは、その営業者に対して措置命令をしなければならないとされております。

 

 ただし、そもそもこういった届け出を行わずにクリーニング業を行っている場合、営業を停止するか、是正をして届け出をきちっと行っていただいて、許可に合うような形で実施をしていただくということを指導することとなるのが、最初の一歩でございます。

 

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厚生労働省の北島智子生活衛生・食品安全部長(当時)

 

 井坂 確認はしていませんが、さすがに無届けで取り次ぎなんかはやっていないんだろうと思うんですけれども、ただ、届け出をやっていたとしても、下着も含めて詰め放題というような受け取り方、また、いわゆる普通のコインランドリーの洗濯機で洗っているようなので、そうすると、何か法に定めるような消毒処理がされているというふうにもなかなか見受けられないということでありますから、これは、ちゃんとやっていれば全然問題ない、むしろ新しいビジネスモデルで、やるなというふうに思うわけでありますが、しかし、法律と全然違うことをやっているのであればこれは問題だというふうに思うわけであります。

 

 大臣にお伺いしますけれども、議員会館の中にもある という業態でありますので、知りませんでしたということでは我々国会議員は済まされない話だと思いますから、一遍実態を、どういう業態でやっていて、特に消毒を要する洗濯物の扱い、法律に従ってちゃんとやれているのかどうか調査をしていただけませんか。

 

 塩崎  原点に立ち返って、公衆衛生上の観点からクリーニング業法もできているわけでありますから、その根本哲学に合わないことが起きているということはあってはならないことだろうというふうに思います。

 

 自治事務自治体に監督をお願いしているといえども、さっき申し上げたとおり、この法律の所管をする官庁として、そういうことが行われ、なおかつ我々の膝元で行われていると。いずれにしても、どういうような実態なのかは自治体とも連携しながら把握をしっかりとして、皆さん方が公衆衛生上問題ではないのかという御心配を抱かないようにしていかなければいけないと思います。

 

 井坂  今大臣の方から、公衆衛生という原点に立ち返ってという御答弁がありましたが、そもそもコインランドリーそのものというのが、公衆衛生という原点から考えると、確かに危なっかしいなというふうには思うようになりました。なぜなら、実は私もこっちに来たら、自分の洗濯物をコインランドリーで毎週洗っているわけでありますけれども、自分のものだけ洗っているから、何となく、ほかの人の洗濯物とは触れずにきれいかなと思っておりました。コインランドリー型のクリーニング業者も、お客様のものだけを、専用の洗濯機でそれだけ洗うから、ほかのお客さんの洗濯物とは一切接触しないですよ、こういう売りでやっておられるわけでありますが、しかし、よく考えたら、私が自分の洗濯物を洗う直前に誰がどんなものを洗ったのか全くわからない。

 

 クリーニング業法が非常に厳しいのは、それこそ、汚物とか病院のものとかが一緒に、ちょっとでも接触したら、昔でいえば疫病の蔓延、こういったことがあるからクリーニング業法というのは今厳しくなっているわけでありますが、その厳しさと比べて、そもそもコインランドリー自体は、私の前の人がおむつを洗っていようがペットのシートを洗っていようが、何を洗っているかわからない、不特定多数の人がどんな汚いものでも洗ってそのままにしていけてしまうということに、ちょっと大丈夫なのかなという気もしたわけであります。

 

 大臣、衛生面が厳しく規制されているクリーニング業と、今普通にみんなが便利に使っているコインランドリーとは、公衆衛生という観点からは物すごい隔たりがあるような気がするんですけれども、それについて、そもそもコインランドリーは厚労省の所管ですらないんだと思いますが、その公衆衛生上の隔たりについて、政治家としてどう思われますか。

 

質疑の様子はネットで閲覧可能

f:id:makotomarron:20170915155740p:plain 質疑の様子はネットで公開されており、スマホなら下のQRから、パソコンの場合は検索サイトより「衆議院インターネット審議中継」で検索。同サイト画面右下にあるカレンダーにて2017 年2月23 日を選択し、予算委員会第五分科会をクリック、説明・質疑者等欄から「井坂信彦」をクリックすると、質疑の映像が始まる。コインランドリーと洗濯代行関連の質問は3時間8分あたりから。

 

 北島  まず、事実関係について御説明申し上げたいと思います。いわゆるコインランドリーにつきましては、公衆が当該施設に設置された洗濯機を使用し、利用者みずからが洗濯するために利用する施設であることから、クリーニング業法の対象とはなりませんが、御指摘のとおり、その衛生確保は大変重要だと考えております。

 

 このため厚生労働省といたしましては、当該施設の施設環境を適正に維持するため、都道府県等に対しまして、必要に応じ条例等を制定することなどにより、当該施設における衛生上の問題の発生を防止し、公衆衛生の維持や向上が図られるよう各施設への指導等に当たることを求めております。具体的には、営業者に施設の衛生措置を求めることや、営業者は利用者に対して、感染症に罹患している人の洗濯物を洗わないことなど汚染防止に関して周知をすることというような内容について、自治体に周知を図るように求めているところでございます。

 

 塩崎  今部長から答弁申し上げましたが、地方自治体に任せ切りでいいのかどうかというのは、少し考えなければいけないかもと私は今思いました。やはり原点に立ち返って、公衆衛生という観点からすれば、どこの所管であろうと、公衆衛生にかかわることは、厚生労働省は責任を持たないといけないというふうに思います。

 

 今部長が言ったように、御自身もおっしゃいましたが、コインランドリー自体の所管官庁はどこだというとなかなかにわかに定まらないということでもありますが、一方で、病院のリネンなどを一緒にするということはなかなか考えられないことで、それはそれとして、ちゃんと滅菌をされるような形でクリーニングされなきゃいけないわけであります。だからこそ専門業者がいるわけですから。そういうところと紙一重のところにあるこのコインランドリーをどうするかということについて、少し冷 静に考えて、専門的な観点から、どういうふうにしていくことが公衆衛生上ふさわしいのかということを厚労省は考えるべきではないかということです。

 

 当面はもちろん、条例でやっていただくというのはそれはそれでやらなきゃいけないと思いますが、根本的に、やはりそこの公衆衛生の問題は考えなきゃいけないのかなというふうに感じたところでございます。

 

 井坂  ありがとうございます。

 

 本日議論をさせていただいたのは、私は、何でもかんでもぎちぎちに規制せよという立場ではふだんからありません。時代に合わない規制は見直すべきだというふうに常々申し上げております。ただ、問題は、こういう新しいビジネスモデルは野放しで、既存の業者は物すごく真面目に昔ながらの規制をぎちぎちに守っている、これはやはりよくないと思いますから、やはり最低限同じルールで競争ができるように。加えて、原点は、法律をつくった趣旨である公衆衛生がちゃんと守られるのか。そこは、新しい業種に対しても、ちゃんと守られるような法適用と指導をしていかなければ、法律は手段ですから、目的は、おっしゃったような公衆衛生でありますので。ぜひそういう観点から、本日のこの新しい形のクリーニング業について実態調査とそして法適用、また、法が現実に全く合わない、しかも公衆衛生上特に意味がなくなっているのであれば、むしろ規制の見直しをということでよろしくお願いいたします。

 

 本日はどうもありがとうございました。

 

コインランドリーは不衛生なの?

「禁止」の表示、「ドラム洗浄」などの対策も

 

 先の記事にある通り、コインランドリーの衛生面を不安視する議論が国会でなされた。同じ様な懸念を持つ人もいるだろうが、施設やメーカー側は何の対策も打っていないかというと、そんなことはない。

 コインを利用したことがあれば分かるだろうが、大半の施設には「ペットが利用したものやおむつ等は使用禁止」との注意書きがある。コインは無人の施設が多いので、違反する行為があっても注意することは難しいが、その分、注意書きは目立つようになっているので、一定の抑止効果はあると思われる。

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様々な「禁止」の表示

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 また、意外に知られていないようだが、利用する前に「ドラム洗浄」が無料でできる機械も増えている。業界大手の㈱TOSEI(本社・静岡県伊豆の国市、中村吉孝社長)の場合、「2008 年4月に発売したSF シリーズ以降の洗濯機、洗濯乾燥機には、ドラム洗浄機能がついている」とクリーニング営業統括部の塚本広二統括部長。モデルにより、ボタンの位置は若干異なるが、概ね左上部についている。

 そのドラム洗浄ボタンを押すと2分間、水(常温)が出てきてドラム内を撹拌し、排水が行われる。オプションで洗剤や除菌剤を入れることも可能。なお、いたずら防止策として、ドラム洗浄は1回しかできないような工夫もなされている(連続して行えない)。

 

▼ドラム洗浄ボタンは、左上部についている。写真は塚本広二統括部長

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 また、洗濯乾燥機に関していうと、同社の調査で利用形態(割合)は洗濯乾燥が8、洗濯が1、乾燥が1になるそうで、9割は乾燥して利用が終わることになる。最後の乾燥で洗濯槽内が高温になるためカビ胞子抑制に効果があり、湿気に伴う細菌類の発生も抑制することは、前号でも紹介した通り。実際に約4年間使用した同社の洗濯乾燥機は、カビ胞子菌が「0」であることが第三者機関によって実証されている。

 同社以外の機械であっても、最近のモデルについては、国内メーカーの洗濯機、洗濯乾燥機には、ドラム洗浄機能がついているようだ。安心してコインランドリーを利用してもらえるよう、施設もメーカーも、様々な対策を講じている。

 
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