コインランドリー情報誌 ランドリービジネスマガジン LBM

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REPORT:㈱wash-plus/5年間で店舗数約10倍大手企業とのコラボ続々 成長を下支えする「特許戦略」。

▲wash+


発明とアイデアを権利で守る


アトピー化学物質過敏症といった病に悩む人の安心・安全のため、界面活性剤や有害な化学物質を含まない「wash+Water」(詳しくは後述)を洗濯で使用する水に業界で初めて採用したコインランドリーとして、2016年12月のLBM第1号に登場した㈱wash-plus(ウォッシュプラス、千葉県浦安市)。

高梨健太郎社長


当時は同市や東京都江戸川区で4店舗展開していたが、高梨健太郎社長は「同じ悩みを抱えるひとりでも多くの人たちに使ってもらえるよう、5年以内に20店舗まで増やしていきたい」と、今後のことを口にしていた。

あれから5年が経った2022年2月、久しぶりに高梨社長の元を訪れたところ、なんと今では目標を遥かに上回る直営店20、フランチャイズ14、そしてマルイホームサービス、セーブオン、全農、大阪ガスビジネスクリエイトの4社とのコラボ出店といった実績を積み重ねていた―――

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さっそくその核心に迫ると、同社の成長の下支えとなっているのは「特許戦略」であった。

 

▲wash +Technologyに関する特許証。右は国際特許証


高梨社長は元々、特許に興味があり「25年前から勉強していた」と話すほど。それはなぜかと言うと、「自分たちのような小さな会社が、何か新しいことを思いついて始めて、それが良かった場合、必ず大きな会社に真似をされてしまう。意見力をつけるにはどうすればいいのか、それができるのが特許だと考えている」と語った。

その特許戦略の特長は「必ず事業を始める前に出願すること」で、wash-plusとして、これまで出願した特許の数は20本にもおよぶ。ちなみに商標も14本出願している。また、特許請求の範囲を「非常に広く」して、ギリギリの範囲で取りに行くことを基本路線としており、それも影響してか、拒絶査定となり、拒絶査定不服審判を申請し、修正して再出願、を繰り返していくので、最初の出願から認められるまでに3~4年という長い時間がかかる。

◆どのような特許なのか?

これまでに取得した特許は、wash +Technology関連で3本、そしてsmart laundry関連で2本。それぞれ、主な内容について紹介していきたい。

まずは前者。「wash+Technology」とは、wash+Waterで洗う仕組みの呼称。

▲「wash+Water」と貯蔵するタンク


そもそもwash+Waterは、極微量の無機電解質と水で生成されているアルカリイオン電解水のことで、コインランドリーでの実用化には高梨社長と大学の研究機関が共同で取り組んだ経緯がある。その中で判明したのが、(1)一度に多く生成できず、店舗に貯蔵するタンクが必要、(2)(1)を経ずに使おうとすると濃度が薄くなり洗濯には使えない、の2点。これらに対して、出願し認められた特許内容は「タンクにwash + Waterを貯蔵すること」。

一方、smart laundryとは高梨社長が2018年に開発・発表したコインランドリー業界初の専用アプリで、ユーザーは洗濯機器の空き状況確認や運転終了通知、ステイタス機能によるサービス・特典、決済(クレジット・携帯キャリア)、ドアロックなど多数の機能を利用できる。

㈱山本製作所のランドリー機器での採用がメインで、同社製が取り扱われている220店舗で、2022年2月末現在130,000ダウンロード(1店舗あたり600人が利用)の実績がある。

▲smartlaundryはランドリー機器上部の画面から二次元コードを読み込んで利用する


アプリの画面からランドリー機器に貼ってある二次元コードを読み込んで個体認識を行って接続し利用が開始されるが、認められた特許の内容は1本目が「アプリを立ち上げて、固有の識別表示を読み込み個体認識しランドリー機器に運転要求すること」と2本目は「アプリを立ち上げ、固有の識別コードを読み込み、利用者の携帯端末とランドリー機器を紐づける手段として、ワンタイムパスワードの入力を用いたり、近距離無線通信を用いること」となっており、ランドリー機器と利用者の紐付けは二次元コードに限らず、近距離無線通信による紐づけもカバーする非常に広い内容の特許だということがここから分かる。

冒頭のフランチャイズやコラボ店は、こうした特許に関連する技術の利用や、「wash+」という商標の利用など、同社からの許諾を得て営業しているコインランドリー。特にコラボ店は、繰り返しとなるがマルイホームサービス、セーブオン、全農、大阪ガスビジネスクリエイトという大手。そこと手を組めるのも特許戦略の功績で、まさに成長の下支えとなっている。ちなみに商標はほか、「wash plus」や「スマートランドリー」、「smart laundry」、「コインランドリー指数」「コインランドリー白書」などを取得している。

◆最強の特許戦略チーム

その特許戦略において欠かせないのが、高梨社長が仕事の中で縁があり出会った、顧問弁護士の鮫島正洋氏と藤田達郎氏(弁護士法人内田・鮫島法律事務所代表パートナー弁護士・弁理士ちなみに鮫島氏は『下町ロケット』に登場する神谷弁護士のモデル)、植村貴昭氏(植村総合事務所代表弁理士特許庁審議官)、そして監査役の牧野和夫氏(弁護士・弁理士米国ミシガン州弁護士で、アップルの法務部長なども歴任)の4人で組む「特許戦略チーム」。月に1度、会議を行い、新たな特許の相談や拒絶査定をされた特許申請への対策など話し合いを進めているという。


▲鮫島正洋氏


▲藤田達郎氏


▲植村貴昭氏

▲牧野和夫氏
 

◆利回り重視・投資目的はお断り

なおフランチャイズ展開の背景には「アレルギーや化学物質過敏症といった悩みを抱える人たちから、『自分の家の近くにもお店を作ってほしい』という問い合わせが多くあり、安心・安全に使えるコインランドリーを増やしていきたい」という想いがある。だから「利回り重視」や「投資目的」といった開業希望者は基本的にお断りしている。
自分たちの発明とアイデアを権利によって守りながら、コインランドリー業界の発展に寄与していきたい意向を示していた。

 

 

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