KEY WORD〔閉 店〕:日建リース工業㈱のAraeru/国内初のサブスクコインランドリーが閉店した理由は? 会員&定額制、実践者の声
会員&サブスク
国内初の会員&定額制(=サブスク)コインランドリーとして2017年、東京都新宿区にオープンしていたAraeru(アラエル、運営・日建リース工業㈱)の全2店舗(1号店:新宿山吹町店、2号店:新宿弁天町店)が2020年10月までに閉店していたことが分かった。
写真:山吹町店が閉店した場所では現在、「洗っていいとも!新宿山吹町店」が営業を行っている
写真:山吹町店の店内
カードキーにより会員しか入店できない防犯性の高さと、月額利用料を支払うと使い放題の定額制で「普段使いのコインランドリー」をコンセプトにスタートした同店だったが、運営元の日建リース工業によると「雨の日の乾燥機を利用や、布団などの大物洗いといった『困ったとき使い』のお客様が多かった。家庭に洗濯機がなくても問題がないくらいのコンテンツを揃えたつもりだったが、そもそも500mという狭い商圏の中でコインランドリーを普段使いする人がどれだけいたのか。パイが少なかったのか、それとも我々が掴めなかっただけなのか」ということで売上は大きく伸び悩んだという。
会員制だったことから、会員数やアクティブユーザー数(週に2〜3回利用する人)を評価項目として重視していたが、両店舗とも「会員数は毎月伸びたものの、アクティブユーザー数は会員の2〜3割程度で、ある時期から横ばいだった。5割を目指したかったが…」と話している。
写真:会員カードがカードキーにもなり、店内に入店する仕組みだった
写真:弁天町店。山吹町店から徒歩10分の距離に出店した
会員制とコインランドリーの相性については、運用面でみると非常に良いと感じたそうで、「店内にたむろする人も荒らす人もいなく、皆さんにとても綺麗に利用していただいた」と話す。一方、運用面以外に目を向けると、会員制だと知らずに来店した人が会員制だと知って他の店に流れたり、会員登録にはスマートフォンとクレジットカードが必須だったため、「会員制が利用のハードルになった可能性も大いにある」と振り返っていた。
写真:「使い放題」のコインランドリーとして注目されていたが…
写真:洗濯代行用のロッカー
写真:山吹町店では、「シェアロッカー」を設置し、一眼レフカメラやレイコップなどのレンタルサービスを実施するなど、コインランドリーという空間であらゆる可能性を模索した
また、定額制については先述の困ったとき使いに加えて「全会員に刺さるサービスというよりは、ある一定の人に刺さるサービス。ある一定の人がものすごい得をする」と分析。実際、想定していない法人利用(同社の推測ではおそらく民泊関連の業者)などもあり、1日に何回も利用して機械を占有してしまうケースもあったそうだ(約款でも法人利用は不可としていたため、そうした利用者には退会措置をとって対応していた)。
2号店では洗濯代行も行っていたが、こちらもなかなか集まらなかった。利用する際「出して取りに行く」という2度の来店が必要だったことから、「完全な代行ではないので、これで外国と同じような水準の家庭用洗濯機の性能だったら話は違ったかもしれないが、洗濯をアウトソースするほどの習慣、文化を作れなかった」とその難しさを述べていた。
同社内では、通常のコインランドリーに形態を変えて営業を続けるという話も挙がったそうだが、「会員制、定額制でなければ、自分たちがやる意味はない」との意見がまとまり、閉店に至った。
なお、1号店、2号店のあった場所では現在、別のコインランドリーがいずれもオーソドックスな無人店として営業をしている。新店舗のオーナーと日建リース工業との直接的なやり取りはほとんどなく出店に至った経緯などは分かっていないが、先日、本誌は1号店の跡地に誕生した「洗っていいとも!新宿山吹町店」のオーナーと連絡を取ることができ、取材の許可を頂いた。近く新オーナーをインタビューし、次号で掲載する予定。お楽しみに!
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