特長を作り特長を伸ばせ! コインランドリー刑事に聞く、最新のコインランドリー動向とトレンド/コインランドリー刑事 藤原健一
関東圏を中心に15年間でコインランドリー約3000軒以上を訪問、独自にリサーチし続けているコインランドリー刑事(デカ)こと藤原健一氏。マスメディアへの登場機会も増えており「最近はテレビでよく見かける」という方も多いのではないだろうか。
そんな藤原氏が昨年(2017年)末にパシフィコ横浜で開催された第2回国際コインランドリーEXPOにて「コインランドリー刑事に聞く最新のコインランドリー動向とトレンド」をテーマに講演を行った。以下で司会進行役を務めた㈱ジェイシーレゾナンスの松永博司社長とのやり取りをお届けする(以下、藤原氏=デカと記載)。
写真:講演には120人超が集まった
写真:司会進行役を務めた松永社長
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松永 これからはどんなコインランドリーが良いのか。社会的に認知を受けて生活インフラとして、地域に根付いて伸びていくのはどんなコインランドリーなのか。そんなことはデカに聞くのが手っ取り早いなと思いました。テーマに沿って選んだ5つのお店を紹介してもらいます。本日はよろしくお願いします。
デカ よろしくお願いします。
松永 早速ですが、まずは便利なお店ということで、大型コインランドリーどるふぃん亀戸店の紹介をお願いします。
写真:どるふぃん亀戸店
デカ キッズスペースがあり、お子様連れの主婦も安心して利用できるお店です。亀有はタワマンが増えており、ファミリー層へのアピールという点で参考にして欲しい手法です。また、国内で10台しか出回っていない布団圧縮機(TOSEI製のAC150P)が置いてあるので、布団の持ち帰りが便利です。
写真:TOSEIの布団圧縮機と子供用のオモチャ。右側がキッズスペース
松永 国内で10台ですか!これまたデカの心をくすぐるのではないでしょうか?
デカ そうですね!レアなお店と言えます。家庭用の掃除機を置くという手もありますが、多分1か月も経たないうちに壊れてしまうので、できれば機械を買って、ふとん洗いのニーズを掴んでほしいです。
松永 立地的にも布団圧縮機の存在が大きいそうですね?
デカ 亀有の街の中、それも裏通りにあるので、車で行くのは難しいです。徒歩で来ても布団の持ち帰りに困らないように、という意味で良いアイデアだと思います。
松永 ありがとうございます。続いて、安心・安全に利用できるお店ということで、Araeru (アラエル)新宿弁天町店の紹介をお願いします。
写真:Araeru宿弁天町店
デカ 2017年9月にオープンしたばかりのお店です。定額会員制のシステムを採用していて、お店への入店(ドアロックの開錠)やランドリーマシンの操作は会員カードのスキャンで行います。
松永 会員制とはまた珍しいですね!
デカ 物珍しさはありますが理に適っているんですよ。
松永 と言いますと?
デカ 「家事の洗濯をコインランドリーで」ということで、日常的に利用されることがアラエルのコンセプトの一つとしてあります。定額制という形を取ると「元を取らなくちゃ」という行動に結び付きやすいので、日常的な利用に繋がりやすいのです。会員登録にはクレジットカードの情報が必須のため、利用者の身元もはっきりしています。女性客にとっては盗難などの心配も無いです。
松永 なるほど。定額制は月ごとの売上も立ちますし、それでいて顧客には安心・安全を提供できるというわけですね。ちなみに、洗濯代行もあるそうですね。
デカ 洗って乾かして畳んでロッカーへ入れてくれるサービスなのですが、「畳む」という所がミソですよ。確実に乾いているわけですから。まさに家事の洗濯を一手に引き受けてくれるサービスですね。
写真:店内。左側にあるのが洗濯代行用のロッカー
松永 コインにおける洗濯代行について、他にどんなメリットがありますか?
デカ 一つ言えるのは、クリーニング師の資格が必要なのでクリーニングを営む業者にとって、今持っている資格が生かせる新たなビジネスモデルということだと思います。
松永 今後増えてきそうなビジネスモデルですね。さて、続いては基本性能が充実しているお店ということですが、これはどのお店でしょうか?
デカ 東京都墨田区にあるリリウォッシュ1号店です。何だかんだ、結局コインランドリーって「洗って乾かす」がしっかりできていないとダメなんですよね。
写真:リリウォッシュ 1号店
松永 確かにそうですね。
デカ リリウォッシュに置いてあるベルギー製の乾燥機は利用客から「他のお店じゃこんなに乾かない!」と大好評なんですよ。元々は寒さ厳しい北欧のメーカーが作っていたそうです。
写真:「良く乾く!」と大好評のベルギー製乾燥機
松永 基本的なスペックが高いんですね!
デカ そうなんです。でも、オーナーはお客様に言われるまで、そんな凄い機械とは知らなかったそうですよ。むしろ、乾燥力の秘訣であるエアフローの凄さと、フィルターの粗さが原因で、隣の家から「綿ぼこりを何とかしてくれ!」とクレームがあって、頭を悩ませていたそうです。
松永 買い替えも検討していた?
デカ 多分、お客様の声が無ければそうしていたでしょう。そういう意味で「お客様の声を拾う」ってとても大切だなと思います。今は隣の家にホコリが飛ばないようフィルターを付けたのでクレームも無く、大繁盛しているそうです。
松永 元々コインランドリーは無人が特徴で、更に今はIT化が進んで「お客様との接点」はどんどん希薄化しています。クレームが多くて辞める店もある中で、リリウォッシュさんではお客様としっかりコミュニケーションを取り、店舗運営に繋げているのですね。基本性能が充実している店の紹介でした。さて、続いては?
デカ 待ち時間を快適に過ごせる店ということで、大型コインランドリーピエロ 49号二宮店です。
写真:大型コインランドリーピエロ 49号二宮店
松永 ピエロってユニークな店名ですね。
デカ 多分、特に意味はないと思うんですよね。ただ、雰囲気で付けたというか。このお店は洗濯革命本舗(現・センカク)という会社がやっているんですけど、社長の西山由之氏がダスキン鶴川というダスキンの代理店をやっていた方で、何とダスキンが上場するよりも先に株式を公開してしまった、ダスキンでは伝説のオーナーなんです。
松永 それはすごいですね(笑)
デカ そんなお店なんですが、約17坪の店舗面積に対して置いてあるのは22㎏洗濯乾燥機、25㎏乾燥機、14㎏二段式乾燥機3台だけなんです。
松永 半分以上スペースが余ってますよね?機械増やさないんですか?
デカ これ以上置くと商圏的に収支が合わないそうです。そこで、残るスペースは絵画の鑑賞コーナーになってます。
写真:奥に飾られているのがユトリロの絵画。解説文も掲載してあるという
松永 絵画ですか?これまた新しいですね!
デカ 西山社長が所有する、フランスの画家モーリス・ユトリロの絵画が並んでます。西山社長は美術館もやられていて、ユトリロの著作権後継者から認められた「真の愛好家」として有名だそうです。
松永 となると、絵画の金額も相当高いのでは…
デカ そうですね。金額は非公開とのことです。一つ言えるのは、「日本だからできるお店」ということですかね。
松永 しかしまあ、外観とは裏腹に和やかなタッチのユトリロの作品が置いてあるとは…コインランドリーに来ただけなのにリッチな気分になりますね。本当にいろんなお店がありますね。さて、次が最後のお店ですね。
デカ 最後は地域のコミュニケーションの場になっている店としてecoランドリー国府台(こうのだい)店です。
写真:ecoランドリー国府台店
松永 どんなお店ですか?
デカ 35坪の広大なスペースを「待合室」としており、コインランドリーの利用客も、そうでない人も、このスペースを活用することができます。
写真:待合室は観葉植物も置いてあり、一人一人仕切られたテーブルもある
松永 何かと併設しているわけではなく?
デカ はい。ホテルのロビーのような待合室を作って、「利用者以外もウェルカム」というオーナーのスタンスで、近所の奥様達のおしゃべりの場になっているそうです。
松永 あえて「○○併設店」にしなかったのでしょうか?
デカ 私はそう思います。待合室としたことがコインランドリーを利用しない人のお店への入りやすさに繋がっているのではないかと思いますし、カフェとか併設にしなくても、コインランドリーの店舗って作り方次第でどうにでもなるんだなって思いました。
松永 地域にどう新しい価値を作っていくかという点でこの取り組みも面白いかもしれませんね。ありがとうございました。
他店に負けないお店を作れ!
松永 さて、ここまでデカにそれぞれ特徴が異なる5つのお店を紹介してもらいましたが、振り返ると色んなコインランドリーがありますね。今日紹介したお店に留まらず、数多くのコインランドリーを訪れているデカが考える、「今後のコインランドリーの形」を教えて下さい。
デカ 「お客様になついてもらえるかどうか」がポイントになってくると思います。たとえ近所にライバル店ができても自分のお店に通ってもらえることが大事です。そのための取り組みを行っているのが、本日紹介した5つのお店だと思います。ただ、これらの店舗もアベレージです。もっと特殊なお店は沢山あります。埋もれる店になってほしくないです。何か一つでも構いません。「これだけは他店に負けない」というものを作って、伸ばしていってほしいです。長く続ければ必ず芽は出ます。
松永 デカの話を聞いていると、無人でできるのが特徴のコインランドリーでも、お客様と接する機会って大切だな、と思わされるのですがいかがでしょうか?
デカ 「水道とガスと電気を引けばあとは機械が稼いでくれる」という考えのオーナーのお店は今後淘汰されると思います。店舗の業務効率化が進んでいますが、その中でもお客様と話す機会を逃してはいけないと思います。
松永 これからもデカの話が聞ける場を作っていきたいと思います。貴重な話をありがとうございました。
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