コインランドリー情報誌 ランドリービジネスマガジン LBM

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KEY WORD〔規制緩和〕:タオルや下着もロッカーで受け渡し・全国で初めて福岡市で認可、サービススタート

 

洗濯代行に追い風?


 コインランドリーは、利用者自身が洗濯や乾燥を行うセルフランドリーが基本であるが、より進化したサービスとして、「洗濯代行」に取り組むところも増えている。洗濯代行は、専用のバッグに詰め放題というスタイルが主流となっており、タオルや下着等が入っていることも珍しくないようだが、そのサービスについて、可能性が広がる動きがあった。

 「現在、タオルや下着など一部の洗濯物(消毒を要するもの)はロッカーでの受け渡しが不可となっているが、感染症対策を自治体が確認するなどの条件を満たせば、ロッカーで取り扱いが可能になるよう規制緩和を求めた」とのニュースをLBM第10号にて取り上げていたが、これは、当時の安倍内閣による国家戦略特区の一次指定区域となっていた福岡市が、2019年9月26日に東京で行われた特区の合同区域会議で「クリーニング業に係る規制緩和について」提案したもの。

 クリーニング業法(第三条三項五号)では、消毒を要する洗濯物として、「おむつやパンツ、手ぬぐいやタオルその他」などと例示しているが、単身赴任が多い土地柄、スーツや下着等をクリーニング店等に出して、受け取るのは好きな時間にロッカーで、となれば非常に便利であろうし、「家事負担を可能な限り軽減し、誰もが活躍できる社会へ!」(福岡市の提案書より)——との狙いもある。

 しかし、実際には難しいとみられていたが、2021年4月2日に全国で初めて、その福岡市が許可を出しサービスがスタート。多くのメディア等でも取り上げられた。


 この背景には、もちろん福岡市が特区の会議で国に提案していたことがあり、厚生労働省が2021年3月26日に「ロッカー等による洗濯物の受取りの取扱いに関する通知」を発出。これを簡単に言うと、具体的な運用については、保健所が許可すればよし、とするもので、この通知を踏まえ、福岡市が早速、独自の基準を策定し、4月2日より全国初となるロッカーを利用したタオルや下着等を含むクリーニング衣類の受け渡しサービスが始まった。


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書類:厚生労働省が2021年3月26日に出した通知



 許可を得たロッカーは福岡市西区の福岡市地下鉄およびJR九州姪浜(めいのはま)駅北口のタクシー乗り場横に設置されている。また、このロッカーにはクレジット決済機能があり、誰にも会わない=“完全非対面”のサービスとなっているのも大きな特徴。


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写真:姪浜駅に設置されたロッカーでは、クリーニングサービスとして日本で初めて、タオルや下着の受け渡しが可能に。「完全非対面」のサービスとなっているのも大きな特徴(画像提供=㈱Aict)




 なお、福岡市では、タオルや下着等を取り扱う場合の衛生管理の方法として、

 ・防水加工された専用バッグの使用

 ・ロッカー内に防水用のプラスチックケースを設置

 ・バッグを回収するたびに、クリーニング事業者がロッカー内を消毒

 ・預けられた洗濯物は、クリーニング所で消毒の上、洗濯

 さらに、利用者へのサービス案内・問い合わせなどの方法として、

 ・テレビ電話が可能な問い合わせ先をホームページ及びアプリ内に表示

 ・アプリ内に利用方法やよくある問い合わせ、問い合わせフォームを掲載

 ・アプリ内及び洗濯物にクリーニング工場の連絡先を表示

 ・アプリ内及びロッカーに取り扱う洗濯物の種類やクリーニングの方法を表示

 ・受け取った洗濯物の処理記録を一定期間保存

——することを求めている。


 クリーニング業法では、利用者に「洗濯物の処理方法等について説明するよう努めなければならない」と定めているなど、もともと対面を重視しており、“完全非対面”の新たなサービスが許可されたのは、コロナ禍ならではのことであろう。

 加えて、政治家の積極的な関与もあったようだ。

 高島宗一郎福岡市長は、全国初となった4月2日のサービス開始を受けて、自身のブログで「実現するまでの経緯は全部省略していますが、この案件も2019年に特区提案してから様々な抵抗を経て2年経過しました。このように日本には50年以上前に出来た規制や、省庁が独自に出す通知が新規事業の障害になっている案件が山のようにあります」との記述とともに、「この件については特に河野太郎規制改革担当大臣が就任されてから一気にスピードが加速しました。私が知る限りでは最も突破力とスピード感がある大臣だと思います」。

 その河野大臣もブログで、「厚生労働省に確認したところ、(過去の)当該通知の取扱いは、技術的助言であり、駅前等の無人ロッカーの利用や下着類やタオル等を含むクリーニング衣類の受渡しを禁止する規制ではないことが明確になりました」と書いており、自身が積極的に動いたことを明言。ここで同時に、ロッカーの設置場所自体についても、クリーニング店に併設されていることが絶対条件ではないとしており、今回の駅前設置につながったとみられる。

 後者については、早くも追随する動きが見られた。クリーニング最大手の㈱白洋舍が2021年4月20日、総合食料品小売業の紀ノ国屋インターナショナル(青山店=東京都港区北青山)にクリーニングロッカーを設置。この店に白洋舍の店舗はなく、ロッカーの単体設置となる。このロッカーにもクレジット決済機能があり、 “完全非対面”でサービスが受けられようになっている。


 このようにロッカーに関して、「設置場所」と「消毒を要する洗濯物」の規制緩和がなされたわけだが、これは新しいビジネスチャンスとして捉えられる一方で、さらなる新規参入の拡大も予想される。ランドリービジネスにとって、大きな転換期となるかもしれない。


クリーニング業法 第三条三項五号

 伝染性の疾病の病原体による汚染のおそれのあるものとして厚生労働省令で指定する洗濯物を取り扱う場合(編集部注・その旨の屈出が必要)においては、その洗濯物は他の洗濯物と区分しておき、これを洗濯するときは、その前に消毒すること。ただし、洗濯が消毒の効果を有する方法によつてなされる場合においては、消毒しなくてもよい。

・消毒を要する洗たく物とは(クリーニング業法施行規則第一条)

 厚生労働省令で定める洗たく物は、次に掲げる洗たく物で営業者に引き渡される前に消毒されていないものとする。

一 伝染性の疾病にかかっている者が使用した物として引き渡されたもの

二 伝染性の疾病にかかっている者に接した者が使用した物で伝染性の疾病の病原体による汚染のおそれのあるものとして引き渡されたもの

三 おむつ、パンツその他これらに類するもの

四 手ぬぐい、タオルその他これらに類するもの

五 病院又は診療所において療養のために使用された寝具その他これに類するもの

 



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