コインランドリー情報誌 ランドリービジネスマガジン LBM

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REPORT:洗っていいとも!/サブスクで閉店の「Araeru」を引き継ぐ、13店舗の運営から見えてきた「成功」と「失敗」

 

バリバリの投資家が経営するランドリー

神奈川県川崎市


 不動産賃貸業や太陽光発電、テイクアウトの唐揚げ専門店(フランチャイズで出店)などを営んでいる原久生さん(㈱川崎ソーラー発電代表取締役社長)は「洗っていいとも!」という、聞き覚えのある某バラエティ番組にちなんだ店舗名が特徴のコインランドリーを神奈川県川崎市や東京都大田区を中心に13店舗、展開している。


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写真:和交商事のオフィスで取材に応じる原久生さん



◆所有する不動産を担保に様々な投資を手掛ける

 事業内容から分かるように、原さんはバリバリの投資家。若い頃は会社勤めの時期もあったが10年ほど前に退職し、母が代表だった不動産賃貸業の会社(㈱和交商事)を継ぎアパートやシェアハウス等賃貸から投資の世界に入った。和交商事のオフィス(川崎市)はマンションの一室にあるが、その建物自体も同社保有の不動産。これを担保として融資を受け、他の投資事業の資金としている。

 冒頭に記載の「㈱川崎ソーラー発電」は、原さんが1億円で購入したソーラーパネル群馬県桐生市)を運営するために設立した会社で、「7年間で7700万円を回収して、毎年1100万円ペースの売上。あと3年ほどで回収の見込み」と語る。2021年4月にはテイクアウト専門の「元祖からあげ本舗ヘリマル」を東京・板橋区の大山にフランチャイズ出店。オープン直後の取材となったが、「絶好調!」とのことだった。


◆100万円で開業した1号店

 初めてコインランドリー市場に着目したのは、2011年東日本大震災のとき。『福島県いわき市いわき湯本温泉に復興従事者の宿泊が集中していて、旅館にある1〜2台の洗濯機が空くのを夜中まで待っている人がいる。国が主導してコインランドリーを作るべきだ!』という内容のブログ記事を目にしたのをきっかけに興味を持って、書籍等でランドリー経営について学び、本格的に開業を検討して、いわき市にも足を運んだ。しかし、「行ってみると既にコインランドリーができていて『同じことを考える人がいるものだな』と感じ、一旦身を引いた」そうだ。

 実際に開業したのはその3年後の2014年で、運営元である不動産会社の破産により、閉店していた川崎のオフィス近くにあるコインランドリーを見かけ、破産管財人に「興味があるから譲ってほしい」と問い合わせたところ、買取価格はなんと居抜きで100万円!と破格の安さであったことから即決した。なお、前オーナーの時から店舗名は「洗っていいとも!」で、破産管財人に聞くと、元々年間700万円と売上自体は決して悪くない店であったことから投資した100万円もあっという間に回収してしまったそうだ。


◆成功するための3つのポイント

 その1号店・武蔵中原店の売上が好調であったことから、2、3店舗目と、どんどん数を増やして2021年4月現在は13店舗を運営中(14店舗目のオープンも控えていた)と、今や立派なコインランドリー経営者である原さん。様々な投資に携わっているだけに、成功するためのポイントを尋ねてみると、①低コスト②店の間口は広く③「人」ではなく「場所」という答えが返ってきた。

 武蔵中原店での100万円は例外中の例外とも言える安さだったが、原さんが作るコインランドリーは機械に関しては全て中古にこだわっている。機械の型番や年式はバラバラで、ここが初期投資額を低めに抑える最大のポイント。東京・大田区の鵜の木にあるお店も機械は中古機のトータル800万円で開業して、年間1000万円を売上(13店舗中トップ)、粗利が600万円。「いかに投資回収を早くするかが重要。800万円の投資で600万円の粗利が出れば、全く悪くない」と原さんは語る。


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写真:全店トップの売上を誇る鵜の木店(東京都大田区



 なるべく投資額を低く抑えたうえで、立地については、「下町チックな雰囲気があるところ」という表現をしている。要するに、店の周りにいる人々がその地域にしっかりと根付いた生活を送っている場所なのだろうと記者は解釈したが、原さんが「ここは売れそうだ!」と思うロケーションでも、店舗の間口自体が狭いと、売上が伸び悩む店もあるそう。その代表例が雑色店(東京都大田区)で、雑色と言えば大きな商店街(雑色商店街や水門通り商店街)が賑わい、まさに原さんが挙げる下町のような雰囲気を持つ場所だが、店舗が狭いゆえに、全13店舗の中で最も低い売上になっているという。

 「人」よりも「場所」が重要だということも、これまでの経験から見えてきたこと。ある3店舗で清掃を任されている世間話が好きな人当たりの良い女性スタッフでも、場所がイマイチなところはお客さんが少ないという。一方、自らお客に話しかけるようなタイプではないスタッフが務める店舗が、実は売上が良かったりもする。中古機も立地も関係者からの紹介がほとんどだそうだが、良い話が原さんのもとに来る理由については残念ながら「秘密!」とのことだった。


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写真:店内の機械は全て異なるメーカーのものが並び、原さんの奥様が表面の色をカスタマイズしている



◆見た目も大事だが、それよりサービスづくり

 実は前号で「国内初の会員&定額制(=サブスク)コインランドリーが昨年閉店」と報じた、Araeru(アラエル、運営・日建リース工業㈱)新宿山吹町店の後を原さんが引き継いでいて、現在は「洗っていいとも!新宿山吹町店」として営業中。


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写真:水色の大きな看板がメインの他店とは異なるテイストの新宿山吹町店だが、売上はまだまだ。今後チラシを打つなど認知度アップを図っていく


 出店の経緯は関係者から「後を引き継がないか?」との打診があって、原状回復後の店舗を居抜きの300万円で買えるということだったので、引き受けたそうだ。

 ただ、前号で閉店理由の一つとして「周辺に住むお客の少なさ」と日建リース工業も挙げていたのと同じく、原さんが後を引き継いだ後も客数は少なく、結局売上は低いまま。「誰でも自由に利用できる店舗に変わっても、会員制だった時代の印象が残っているのかも。買取価格は安かった分損はないけど、もう少しチラシは打たなきゃ」とも述べていた。

 そんな山吹町店は巷でブームの「おしゃれ風コインランドリー」に外観を仕立てていて、その理由は「フレディレックをはじめ、おしゃれな店舗をベンチマークして、『お客さん多いな!』と思ったから」。しかし、「だから、山吹町店はこれまでの店とは少し毛色を変えてみたんだけど、、、やっぱり外観や壁紙、内装の細かい部分等、突き詰めて作り込んでいかないと、ダメ」ということが、山吹町店の運営を通して分かったそう。

 ということであれば、「消費者の『綺麗にしたい』、『しっかり乾かしたい』というコインランドリー本来のニーズに、まっとうに応えられるサービスづくりを追求していくのが自分の仕事」と、失敗を次に活かす前向きな姿勢が印象的だった。



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