コインランドリー情報誌 ランドリービジネスマガジン LBM

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(株)日本売上アップ研究所 中西正人/500m圏内にライバル店が3店舗 勝ち抜く戦術はこれだ!

過当競争時代の  コインランドリー経営のコツ

 

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(株)日本売上アップ研究所 中西正人

 

 

 「コインランドリーはずっと右肩上がり」——この状況に最近、変化が起きていることを、前号・LBM第15号の「以前は10分100円だった乾燥料金を20分100円にしたランドリー」の記事で紹介した。新規出店が進む中、ライバル店がすぐ近くに誕生するケースもあり、目移りしたお客を呼び戻す策として価格競争=値下げをする——そのような光景が見られるようになったという内容。ライバル店が現れたとき、既存店のオーナーはどのように戦えばよいのだろうか?

 

 2021年9月15・16日に開催された「第6回国際コインランドリーEXPO2021」では、コインランドリー経営の指導を行う、㈱日本売上アップ研究所(本社・大阪市)の中西正人代表が、「500m圏内にライバル店舗が3店舗あっても勝ち残る戦術」を公開。多くの来場客を釘付けにした。以下は中西代表の講演内容。

 

まだ本当の意味での

オーバーストア状態」ではない

 

 3年前、市場調査専門会社・矢野経済研究所の発表で『コインランドリーの市場規模はずっと右肩上がりで拡大しており2018年度に1,000億円以上になる』というデータが示されました。

 

 また、本日(国際コインランドリーEXPO)出展しているゼンドラさんが発行しているコインランドリー専門情報誌『ランドリービジネスマガジン(LBM)』に掲載されていた店舗の数(以前は厚生労働省が調査を行っていたが2013年度をもって終了。その後はLBMが業界関連企業へのヒアリングを基に予測値として発表している)は、どんどんうなぎ上りで、今では2万店舗を超えたと推定されています。新規参入が活発に進んでおり、今では「過当競争」と言われています。

 

 

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上段左は、矢野経済研究所の発表した市場規模。右はLBMが予測値として発表している施設数。下段は、中西氏による1店舗あたりの年商

 

 

 どれほどの「過当競争」なのか?それを知るため、1店舗あたりの年商はどうなっているのか?という数字を出してみました。公的に出ている2つのデータを私が加工しただけです。単純です。年度ごとの市場規模と店の数を割り算しました。この数字がもし下がっているとすれば、「市場規模が伸びているから参入のチャンスです」といっても半分ウソになります。しかし、算出された数字によると、1店舗あたりの年商は、2014年の段階で400万円台後半だったものが、直近の2019年は540万円くらいとなっています。1店舗あたりの年商は、まだ伸びています。

 

 だから、まだ参入しても大丈夫です。本当に大変な意味での「過当競争=オーバーストア状態」にはなっていません。市場規模の伸び率と店舗数の伸び率を計算してみたら、両者ともに順調に伸びていました。市場規模は直近で8%、店舗の数は3%伸びています。1店舗あたりの年商は4%伸びています。市場規模の伸びのほうが、店舗数の伸びを上回っています。これはどういうことか?結論から言いますと「良い店が増えている」「コインランドリー需要が増えている」ということです。最近、皆さんが勉強を始めて1店舗あたりの年商の高い店がどんどん増え、消費も活性化しているのです。競争も熾烈になってきています。このデータだと1店舗あたりの平均年商が540万円。新規で店舗をオープンさせるオーナーさんが3人いたとすれば、3人の店舗の売上は、500万円以下・500万円・500万円以上と1人ずつ分かれるというイメージです。1,000万円以上の店を作れるのは10人に1人。実体は、そんな状況です。

 

年商1,000万円以上のお店を作れる

オーナーは「10人に1人」

 

 この1店舗あたりの年商540万円という数字。実は、国民1世帯あたりの所得と、ほぼ一緒なのです(国民一世帯当たりの平均所得は550万円 ※2019年度調査)。

 

 

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1世帯当たりの所得の分布。「コインランドリーの年商もこれとほぼ同じ分布になる」と中西氏は述べる

 

 

 左にいけばいくほど所得が低くて、右にいけばいくほど所得が高いというグラフでして、このグラフは、コインランドリーのものではなく、あくまで「国民1世帯の所得」ですが、おそらく同様の分布になっています。このグラフが示すように世帯所得が1,000万円以上のご家庭は、全体の10%程度です。コインランドリーでも年商1,000万円のお店は全体の10%くらいだと思います。10店舗作って1店舗あるかないかではないでしょうか。そして、60%以上が500万円台以下の店舗。そんな現実は知っておいたほうがいいでしょう。

 

 なぜ、年商が下がれば下がるほど該当する店舗が多くなるのか。それは、コインランドリーも個人所得も一緒です。自由競争の世界では、このような分布(=カイ2乗分布と言います)になります。勉強しない人、努力しない人が、とことん弱者で、弱者はとことん弱者になります。逆に、ちゃんと勉強をしている、努力している賢い方たちは、年収が上がります。そんな人たちは10人に1人くらいということです。コインランドリーも同じで、経営に関してまったく無知、あるいは誤った認識でスタートして、500万円以下の不採算店をお持ちの方が大半を占めています。このセミナーにお集まりいただいた皆さんは、おそらく優秀な10人に1人=1,000万円以上のコインランドリーを作る可能性の高い皆さんだと思います。このセミナーでしっかり勉強してくださいませ。

 

 このコインランドリーの実態を簡単にまとめると以下の通りです。平均店が年商500万円台くらい。繁盛店と言われるのが700万円〜800万円台、プロ野球選手で言うと1軍レギュラー選手です。年商1,000万円以上になるとオールスターに選出されるレベルです。トップクラスですね。5年ほど前に作った表ですが、現在の実態数字を見ても大体合っていると思います。目の前を通ったとき、いつも機械が1台動いているのが700万円〜800万円の年商を持つお店ですね。素人さんは「あそこのお店、いつも1台くらいしか動いてないぞ」と言いますが、私たちからすれば「いつも1台動いているなら、繁盛店だね」という感覚です。

 

 

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「いつ見ても1台しか動いていない回っていないお店」も立派な繁盛店!

 

 

年間売上の目標は「投資総額÷2」

 

 では、「勝ち残る」とか「生き残る」とは最終的に何なのか? それは「ずっと地域一番店であり続けること」と「さっさと投資分を回収して、あとはもうどうなってもいいという状況を作ること(いわゆる勝ち逃げ)」です。おそらく、この2つしかないと思います。一番店か二番店、地域トップクラスでいることが大切です。

 

 私はクリーニング業界へのコンサルティングも多いのですが、クリーニングはリモートワークの影響で需要がどんどん下がっています。今後、コインランドリーも需要が下がる時代がやってきます。そんな時にどういうお店が生き残っていくのかというと、地域でトップシェアをとっている「一番店」は、なかなか売上が下がりません。逆にクリーニング業界で言うところの「小さな取次店」は一気に売上が減ります。

 

 これを、私は「シャンパンタワー理論」と名付けています。上から順番にシャンパンを流して上のほうは満たされるけど、下のほうは満たされません。市場が大きくて上から大量のシャンパンが流れる時は下まで満たされますが、市場が小さい時は下まで満たされません。「ですから、一番店を作ってください」と、皆さんにお伝えし、そのサポートをしています。

 

 その次に大切なことは「逃げ切る」ことです。投資金額を5年ぐらいで、さっさと回収して「あとはどうなっても構わない」という状況を作ることです。

 

 「一番店であって、投資回収が早い」という両方ができれば最高です。その基準をまとめました。投資総額÷2ぐらいが年間の目標売上となります。たとえば全部で3,000万円かかったら、年商1,500万円くらいのお店を作る。投資総額2,000万円なら、年商1,000万円必達。これが第一の目標です。未達であれば「早期回収できていない」と見て良いです。ギリギリの生死ラインは投資総額÷3です。この生死ラインで投資回収までおそらく7〜8年くらいです。回収までに10年かかればマンション投資と一緒ですから…コインランドリーをやる旨味が薄れます。投資総額÷2の年商を目指して欲しいと思います。

 

 

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投資総額÷2の売上が必達。÷3では早期回収は見込めないとの基準を示している

 

 

絶対的に重要な「初年度の売上」

そのワケは?

 

 開業後の売上はどうやって伸びていくのか。これも甘く考えてはだめです。売上は3〜5年くらいは伸びますが、そのあとは下がっていきます。下がり始めたら、内装や看板を、プチ・リニューアルするなどして、再び売上を伸ばしていかなければなりません。ですから、メーカーさんやFCの売上シミュレーションを見ると、売上予測が嘘か本当かの見分けは、すぐつきます。売上は5年以内に頭打ちとなるシミュレーションとなっているか?もし、頭打ちとなっていないなら、5〜10年後に、改装の費用が見込まれているか?

 

 売上伸び率は「指数関数的減衰」を見せます。例えば1年目と比べて2年目の売上が20%上がったとします。すると3年目に何%上がるか、ある程度決まってきます。20%×20%=4%です。3年目は4%×4%で0.02%伸びます。これを指数関数的減退と言います。ということは、何が大事なのかと言いうと、そもそもの初年度の売上です。ベースの売上がないと、いくら後で頑張っても、そこから先は伸びていきません。次に大事なのは、1年目から2年目にかけての伸び率です。もし30%アップすれば、30%×30%で翌年は9%伸びます。4%(先ほど示した値)の倍以上伸びます。なので1年目と2年目は特に頑張ることが大事です。そもそも、高い売上を上げることができる立地に、良い店舗、良いラインナップを作ることが大事です。売上計画を立てる時の参考にしてください。

 

より正確な商圏の決め方とは

 

 続いて、その年商の予測方法です。これはあくまでサンプルとして出した数字です。私たちは、コインランドリーの一人あたり年間支出金額を地域ごとに出していきます。一人あたり平均いくら支出するのか?というのは、コインランドリーの場合、地域ごとに異なります。

 

 

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売上予測。商圏人口は車を走らせ「実走5分圏内」で算出

 

 

 分かりやすく言うと、さきほどコインランドリーの市場が1,000億円を超えるくらいあるというデータがありました。1,000億円÷日本の総人口をして頂くと、1人平均いくら支出しているのかが、だいたい分かります。約900円です。900円が全国の平均値です。ただ、この数字は地域によって大きく異なります。のちほど計算方法を説明します。

 

 あとは商圏人口です。人がどれくらい周りに住んでいるのか。私は車で5分圏内としています。メーカーさんやFC本部さんの予測数値を拝見すると、店舗を中心に円を書いて「500m」とか「1㎞」とか算出している場合もありますが、実際に人が動くのですから、信号がいっぱいあるような都会だと5分間で500mも行けません。逆に信号が少ない田舎では5分あれば2㎞〜3㎞行けます。そのため、東西南北に車を5分間走らせて(街中の立地なら歩きや自転車でも)、エリアを描いてそこに何人住んでいるかという数字が「商圏人口」です。分断要因(鉄道、川、大きな道路、市町村等)も加味します。この例では、2万人となっています。商圏人口とその地域での一人平均支出金額を掛け算すると、年間の市場規模が算出できます。その商圏に全体でどのくらいのコインランドリー需要があるのか、というのが分かります。トップシェアは1番店で30%以上です。このシェア率30%以上を維持し続けるのが、先ほどもお伝えしました通り、勝ち残りの一つの条件です。

 

ライバルがいない立地に潜む「落とし穴」

 

 左下の図表で、売上の予測をしています。例えば、商圏人口2万人で、1人あたりの年間支出金額が1,200円の商圏で、この店舗の初年度の売上は800万円くらいという予測をしていますね。この予測は良くも悪くも、ぴったり、ほぼ当たります。

 

 次に先ほど少し話した一人あたりの年間支出金額の出し方ですが、これは少し複雑です。難しいので簡単に説明します。中西流の売上予測チャートです。

 

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中西流の売上予測チャート

 

 

 縦軸の地域における競合の数と横軸の競合が開業してからの年数の合計(2年経っているお店と5年経っているお店があれば、2+5で7年)から算出していきます。つまり、競合が多ければ多いほど、開業年数が経っていれば経っているほど、市場規模が上がっていくということです。メーカーさんやFC本部さんの方から「全然ライバルがいないから良い地域ですよ」と言われたら「それは要注意」と思ってください。その地域はコインランドリーという業種に対して、消費者の馴染みがないので、市場を開拓するのにものすごく苦労します。競合はいたほうが良いのです。できれば「古臭い店舗なのに、年商が高い」という店が集まっている地域に新しい店を出したら、売上は初年度から一気に上がります。

 

 この表で、地域の市場規模を算出します。さきほどの例で、一人あたりの年間支出額が1,200円と書いてあったのは、おそらく競合の店数が3で、合計の開業年数が4〜10年くらい経っている地域だったのだと思います。マンションの下の小さいお店などはカウントしません。あと、マーケットに関しては『駐車場指数』というのもあります。駐車場が多い地域は需要が拡大し、駐車場が少ない地域は需要が縮小します。これは自店の駐車場の数ではなく、競合店の駐車台数の合計で見ます。

 

出店を判断する「競合指数」8つの項目

 

 次に、シェアの予測を行います。まずは、単純に競合の店数で割り算します。たとえば3店舗あるところに出店(4店舗目)して普通に商売したら25%となります(100%÷4店舗)。次に『競合指数』を加減して、より正確なシェアの予測を立てていきますが、これがとても大事です。この指数で勝つように、スタート時点から組んでいけば勝てます。ライバルと比べてもし勝っている要素があれば1%、先ほどのシェアにプラスします。つまり、自社の経営力が、プラスになるようなところに出店し、マイナスは作らない。マイナス要素があるなら、できるだけリカバリーする方法を考えなくてはいけないということです。『競合指数』は8項目あります。坪数、機械台数、駐車場の台数、視認性、店前の通行量、商集積動線(スーパーとか駅とか人が集まる動線の途中にあるのかないのか、どちらが立地的に有利なのか)、店内、人的要素。これで競合店をチェックして上回れば、GOサインです。逆に、これがほとんど負けているようであれば、やらない方が良いと思います。私はこの計算に基づく売上予測で納得いただければ、「オープンして良いですよ」と言っています。

 

 『競合店の数』や『開業後の年数(合計)』、『駐車場指数』などの要素によって市場規模が変化します。その中でシェアを取るためには『競合指数』の8項目で絶対負けないような店を作らなくてはなりません。負けるとしたら、負け幅を最低限に持っていく努力をしなくてはならないということです。

 

戦う前に大切な「自店の立ち位置」の把握

 

 ここからは競合対策。ライバルとの戦い方について、ご説明します。

 

 当社への問い合わせの内容で多くを占めるものは「どのメーカーにしたら良いですか?」というご相談です。私は「メーカーは基本的にどこでも良いですよ。」とお話しています。高い売上・早期回収のコインランドリーを作るために、私の頭の中にあるのは以下の2つの原則だけです。まず、自店が強者(先ほどの8項目の中でライバルよりも圧倒的に勝てる、地域の中で強いポジションに立っている)なのか、それとも弱者(参入しても負ける、地域で3番店か4番店ぐらいのスタートだと考えている)なのかによって戦略が異なります。

 

 もしも強者の場合は「包み込み戦略」をやってください。これは相手がやっていることを、丸々そのままパクリ続けるということです。相手が出したチラシ、実施しているサービスを全部採り入れて、全部やり続けます。これはプライドを捨てられるかどうかです。でもこれが強者のプライドとも言えます。

 

 逆に弱者は「差別化戦略」をやってください。徹底的に相手と違うことをやり続けます。相手のマシンがメタリックボディならこちらはカラフルボディとか。相手の店内がハイセンスなら、こちらは、親しみやすさを出す、とか。

 

 

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競合店対策の原理原則は2通り

 

 

 でも弱者ほど強者がやっていることを真似しがちです。「包み込み」ではなく、わざわざ「包み込まれに」行くのです。そして負け続けます。当たり前です。同じことをやればずっと強者にお客様が行き続けます。弱者は、違うことをやって差別化しなげればなりません。なので先ほどの話に戻りますが「どこのメーカーが良いですか?」と相談されたら「それによって売上が変動することはありません。どのメーカーも性能が良く、アフターもしっかりしているので、そこまで大きな違いはありません」「ただ、自分が強者になるか弱者になるか、それによって、機械を決めるのが良いです」と説明しています。

 

 (機械の)品ぞろえも同じです。乾燥機や洗濯乾燥機の台数はどうか? 相手の台数をチェックして相手よりも上回ることができるのか、どう考えても上回ることができない(弱者)であれば、どこかの分野で上回るしかないのです。相手の弱点がどこにあるのか?を分析して、そこで勝負していく作戦を採ります。店のテイストも一緒です。綺麗なお店はたくさんあると思いますが、弱者の場合、それも相手と異なるテイストを採用します。相手が暗いテイストのお店ならこちらは明るくするとか、強者になれる場合は、あえて同じテイストの店にします。それが「包み込み戦略」ですね。このように、強者と弱者によって戦い方の基本的な考え方は全く変わります。

 

勝ち抜くために必要なのは「製品」ではなく「商品」

 

 売上アップの代表的な4要素をご紹介します。①商品力。売上を上げるために一番大事なのはこれです。コインランドリーの場合、商品とは並んでいる機械です。でも機械の性能・数だけで勝負をし始めたらそれは金持ちが勝つに決まっています。だから私は「中古の機械でも構わないと思います」と説明しています。それでも十分勝負できます。機械をそのまま並べるだけでは「商品=アイテム」ではなく、工場から出荷された「製品=プロダクト」です。それをただ並べているだけでは、お金持ちが勝つに決まっています。

 

 

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売上アップへの近道は「商品力」の強化

 

 

 たとえば、スーパーでも雑貨屋さんでも、工場から出荷された「製品」を、ちゃんとデコレーションして、見せ方を工夫して、POPを作って、売れて、これで初めて「商品」になるのです。製品を商品にするのは皆さんの力次第です。私が今度の店(※中西氏の会社は直営店も複数運営している)でやろうと思っているのは、機械1台ずつに名前を付けることです。一般的には「1番」、「2番」、「3番」なんですけど、その代わりに「個別の名前」をつけるとか、そうゆうことを考えています。極端に言えば、それが「製品を商品にする」ということなんです。

 

1,000万円クラスのお店になるために

—コインランドリー最強の姿とは—

 

 次が②店舗です。立地とか入りやすさとか外観・看板・内装。あとは③接客で勝るか、④販売促進(チラシの投入とか)でPRして勝つことが大事です。

 

 特に、接客はとても大事にしています。私が運営している店舗も、ご支援している店舗も、年商1,000万円以上を余裕でクリアしている店舗がほとんどです。なぜ、売上が高いか?その理由のうち3割くらいはスタッフさんの力だと思っています。清掃中「お客様には、必ず声かけてくれ」と指示しています。「それは、時給に含まれている仕事です」と教育しています。私は、コインランドリーの最強の姿は『井戸端会議』だと思っています。それを目指しています。昔、江戸時代に井戸場に人が集まってわいわいがやがや話していた、ああいう風景の広がるコインランドリーにしたい。それが最強のランドリーであり、目指すべき姿である、と考えています。ですから、店舗の現場に行ってみて、分からないことがあればお客様同士で教えあったりする光景を見ると本当に嬉しいです。競争戦術とか生々しい施策を立てながらも、そんな現場をできるだけ作っていきたいという想いがあります。

 

 「お客様同士で仲良くなってもらおう、と思ったら、まずは自分たちからお客様に声をかけていかないと、お客様はそうならないよ」とスタッフにはお願いしています。笑顔で挨拶すること、機械の前で立ち止まっている人がいれば「分かりますか?」と声をかけてもらうこと、等々で、お客様とお友達になるように、と言っています。掃除の時間は本来1時間でも良いのですが、2時間たっぷりとるようにして、コミュニケーションできるようにしています。人件費が月に3万円ほど増えますが、それ以上の価値はあります。機械や店構えなどハードの価値も大事ですが、こうしたソフト的な価値もこれからもっと追求していかなくてはなりません。良い清掃スタッフが、たくさん集まる求人広告も作ります。面接と初期教育には力を入れています。7〜8人面接して1人くらいの採用率です。

 

負け始めたときにやること

 

 負け始めたコインランドリー=売上が下がり始めたランドリーを、立て直す方法をお伝えします。新しい機械は購入しなくても良いです。

 

 例えば、A店(中西氏の顧問先のお店 ※次ページに写真掲載)では、機械の表面を貼り替えました。看板屋さんがやってくれます。このお店は銀色のシートを張り付けていますね。かかる費用は、全ての機械を貼り替えても20万円くらいでした。シートもいろんな色があります。「金色の機械を、一個作れ!」と言ったのですが、残念ながら、断られてしまいました。金色の機械なんて、あまり見たことがないので面白いと思ったのですが…。もう投資を回収済みの機械だったので、何やってもいいと思ったんですけどね(笑)。作業するときは、このように、機械の前面パネル部分を分解して貼っていきます。これだけで、ものすごく印象が変わります。これも立て直す方法のひとつですね。

 

 大事なことは「箱(店の見た目)」は二の次、三の次だということです。やはりどんな場所にどんな品ぞろえで大事な自分たちの機械をどのようにPRしていくかです。1台ごとの機械に入れていただくコインの数を多くすること。そこがベースです。あまりにもデザインとか雰囲気、そういったものに溺れないようにしていただきたいなと思っています。古い機械でも、売上をあげようと思えば、十分可能です。店舗や雰囲気を否定するわけではありません。基本的には広い店はシックな感じでもOKです。狭い店は、汚れが目立ったとしても白っぽい作りのほうが広く感じるので、個人的にはオススメです。

 

また、ドラムの入り口に「お引き取りNGの方は時間内のお引き取りをお願いします」といったように、自分たちで作って貼ったりするのも良いです。出荷されたまま状態で機械を使うことは、あり得ないことです。機械1台ごと、丁寧に作ってゆきます。POP、ポスターはできるだけ否定の言葉は使わないようにしましょう。例えば「防犯カメラ」という言葉もできるだけ使いたくないです。当社では「安心カメラ」と表現しています。

 

 

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A店では、機械の表面を銀色に変え、商品力アップを図った

 

 

 乾燥機のコイン投入口には「料金の目安」というPOPを貼っています。これも製品を商品化する一つの方法です。「32分で400円 量少なめ、薄手の品物に」「40分で500円 量多め、厚手のお品物に」「48分600円 低温で丁寧に仕上げるときに」といったように書いています。機械の特長は何か、お客様が現場で、何を質問されるのかといったことを考えながらこういうのを、作っていただきたい。それから、私が作る店では、ブラックボード(黒板)も、よく使います。ヒトの場合も、見た目が完璧な人よりも、ちょっと抜けたところのある人間とか、抜けたところや愛嬌のある人のほうがモテたりしますよね。コインランドリーも同じで、ちょっと可愛げがあったり、メッセージを飾るスペースがあったりしたほうが「モテ」ます。永く繁盛します。これが「ハード価値からソフト価値へ」ということです。他にも、たとえば、コインランドリーには必ず設置している「忘れ物コーナー」。忘れ物はちゃんと個別にビニールに入れてあげて、ラッピングして見つけた日時・場所などを書いておきます。このような「親切さ」の「見える化」を実施しています。

 

 

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黒板を使い可愛げアップ。「このほうが『モテる』」

 

 

 接客力を上げるため、店舗クオリティを上げるため、スタッフ同士の連絡ノートは、毎回チェックしています。スタッフのモチベーションが手に取るようにわかります。接客力の良い店ほど、丁寧に書いてくれています。たとえば、当社のスタッフノートのある日の一文をご紹介します。「外のゴミ拾いをしていたら、白髪のおばあちゃんが『いつも綺麗にして頂いてありがとうございます』と言ってくれました。ゴミ拾いのトングをもってアピールしておきました」と書いてあったりします。こういったことを書く雰囲気をできるだけ作っていくようにすると、3割くらい売上が伸びますよ。スタッフさんは、ただ単に掃除していれば良いというわけではないので、バックヤードの雰囲気を良くしていくということにはぜひ取り組んでいただきたいと思います。

 

価格競争は最終手段。

価値を高めて売上を上げる

 

 最後にチラシについてご説明します。次ページの写真は、当社直営店舗のチラシです。「半額」セールとか価格競争はしません。定価で勝負しています。価格競争は最終の手段です。出店に失敗した店舗や、自分と他人を信じることができない経営者が運営する店舗は、料金を安くしたり割引したりする傾向にあります。当社は、そもそも出店に失敗せず確信を持って店舗を作るので、値引きは敬遠し、価値のほうを高めて売上を上げます。

 

 価格表記は、乾燥機が100円〜、洗濯機は300円〜、洗濯乾燥機については1,000円超えるので50分〜と、時間のほうをPRしています。続きまして、裏面。これは、当社のチラシの一番の特長なんですけど「まだコインランドリーを使ったことがない人へ」とコインランドリーの良さをリストアップして、「今はまだ。他のコインランドリーを使っている人へ」というコーナーを作り、競合店と違う利点をズラーっと書いたりしています。

 

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直営店のチラシの料金表示。洗濯乾燥機のみ、料金ではなく時間をP R

 

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LINEの友だち登録を活かした商圏分析も

 

 

 「こんなごちゃごちゃしたチラシ見ないよ」という人もいらっしゃいますけど、ごちゃごちゃしたほうが、当たります。お金を払う側=お客様は必死ですよ。しっかりジーッと見ています。大きな文字で、デザイン優先で、ざっくり書いてあるチラシよりも、当たります。だから当社のチラシは細かくしています。細かくなっても、新聞みたいなレイアウトになっていれば大丈夫です。写真・見出し・本文のようにメリハリがついていれば、大丈夫です。

 

 チラシは月1ペースで投入していきます。ポスティング業者さんに10万枚くらいまとめて事前に納品しておいて、週間天気予報で雨の日が連続する日を狙って、電話して入れてもらいます。そのほうが効果は高いです。特に雨の日マークが週末に並んでいるような場合はチャンスです、投入すれば一気に売上が上がります。こちらのチラシは当社で作ったランドリーバッグを無料プレゼントすることを案内したものです。私はコンサルタントなので、単に、直営店の売上を上げるための無料プレゼント、ということではなく、お客様がどこから来ているのか?というデータを知りたかったので、名前と住所、LINE登録を条件に、無料プレゼントしています。数か月で名簿が300人分、とれました。年に数回はライン配信をします。名簿の住所を分析すると、お客様は、ごく近隣から来店しておられることがわかります。さきほど「商圏は5分圏内」と説明しましたが、住所を分析した結果、お客様の8割は3分圏内にお住まいのお客様でした。こうした割引以外の特典キャンペーンを実施することも良い方法のひとつでしょう。

 

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「お金を払うお客様は必死」という考えの下、情報はとにかく山盛り!

 

 

中西正人(なかにし まさと)

 ㈱日本売上アップ研究所・代表取締役。1972年、兵庫県加古川市生まれ。

 1995年、同志社大学卒業。同年、船井幸雄率いる経営コンサルティング会社㈱船井総合研究所入社。同社にて、クリーニング店・活性化チームを創設し、10年間にわたり、チームリーダーを務める。  2011年「㈱日本売上アップ研究所」を設立。個人経営のクリーニング店から、多店舗・多工場展開を行うクリーニング店まで、幅広い特長のクリーニング店の経営支援を行っている。

〒541-0041 大阪市中央区北浜1丁目1-27

TEL 06-6121-3080 FAX 06-6228-7127

 

 

 

 

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