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REPORT:敷きふとんなど未開拓だった市場を開拓、わずか1年で売り上げが2倍に/第3回コインランドリー店アワード【最優秀賞】受賞店


フトン巻きのジロー

沖縄県島尻郡


 国際コインランドリーEXPOの開催とともに2016年からスタートした「コインランドリー店アワード」。業界唯一の専門媒体としてLBMも初回から選考委員を務めているが、業界の成長カーブに比例してエントリー店舗のレベルは年々アップしており、委員の意見が分かれるケースも少なくない。しかし、3回目となる今回の最優秀賞は、圧倒的な支持を集めた「フトン巻きのジロー」に決定。卓越したマーケティング力、売り上げを伸ばしている実績、医療研究機関と連携し、ふとん丸洗いがもたらす健康面への効果検証に取り組んでいること等を総合的に判断した。

 フトン巻きのジローを運営するのは、㈱ランドリージロー(沖縄県島尻郡南風原町、森下洋次郎社長)。2018年10月末の時点で、沖縄県内で13店舗(直営6、FC7)を展開する。2016年6月にオープンした1号店は、衣類洗いがメインの通常のコイン店であったが、1年後、大型洗濯乾燥機と独自技術の「フトン巻き」(商標登録済み)により、日本初のフトンに特化したコインランドリーへと転換(同社では“フトンシフト”と呼ぶ)。掛けふとんにとどまらず、敷きふとんも洗えるようになるなど、未開拓だった「フトン洗い市場」を開拓したことで、わずか1年で売り上げ2倍(直営店月間平均160万円)水準を達成。その後も非常に好調で、10月もトップ3店舗は250万円前後の好成績を残したという。

f:id:murakamihjm:20181225165317p:plain写真:オープン時は衣類洗いがメインの通常のランドリーであったが、1年後に日本初のフトンに特化した店へと転換

 沖縄発のジローだが、森下社長は奈良県の出身で、中高は鹿児島ラ・サール学園から慶應義塾大学に進む。2006年27歳の時には東京でIT企業を設立するが、業績悪化やリストラなども経験。そんな時に、立命館大学客員教授として働かないかとのオファーを受ける。選抜した学生を送り出すために海外の一流企業を視察する中で、イノベーションを起こすにはやり方があることに気づき、「再度自分も事業を起こしたい」との気持ちが強くなり、旧態依然としたコインランドリー業界に目をつけ、沖縄に移住した上での事業参入を決意したそうだ。

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f:id:murakamihjm:20181225165440p:plain写真:最優秀賞受賞時は黒のイメージだったジローだが、最近の店舗はブルーが基調となっている。写真は2018年9月オープンの沖縄・与那原店(FC店)


 前述の通り、当初は衣類がメインのランドリーであったが、徹底した差別化ができないと資本力の勝負になってしまうと感じて“フトンシフト”に転換。同時に、「フトン洗い普及にはテレビCMの活用が必須」として、700万円をかけて沖縄でテレビCMを展開、県内でのCM認知率は50%にもなるという(電通調べ)。

 その一方で、「いま、沖縄には本土からのサービスが非常に増えている。国道沿いはほぼ他県とも変わらない風景。そこにフトン巻きが普通に出店し、街並みに溶け込めたのは非常に大きい。CM認知などの効果はあるだろうが、出店場所を見極めたことが重要で、これは自分が沖縄で生きてきた経験に基づいている。うちなんちゅ(沖縄の人)になれたといってもいいと思う」と森下社長。

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写真:︎ジローポーズを決める森下洋次郎社長

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写真:最優秀賞の盾と賞状


 森下社長はさらに、“フトンシフト”成功の要因として、「人に恵まれた」ことを挙げる。複数店舗を運営するためにはスタッフ(ジロークルーと呼ぶ)が必須となるが、中心となっているのはママたち。子供を背負いながら働くスタッフも少なくないそうで、「彼女たちの責任感により、店舗運営が滞りなく行われているから、自分は事業に集中することができる」と感謝している。

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写真:店名が「フトン巻きのジロー」のため、毛布や羽毛まで巻いて洗ってしまう人もいるという。正しく洗わないことで満足度が下がってしまう懸念があるので、最も見極めが難しい敷きふとんは、手づくりのミニチュアで洗い方を分かりやすく伝えている。このミニチュアは、ジロー全店に設置されている


 FC展開を本格的にスタートさせ、2018年11月には栃木県と埼玉県にFC店舗がオープンしたが、これはジロー初の沖縄県外の店舗となる。ジローでは、2020年までに全国100店舗を目標にしており、マーケティングや店舗施策、研究調査に至るまで、外部のプロスタッフをうまく活用している。「中心となっているのは、高校時代など昔からの付き合いがある人たちで、各々その道では名前も通っている人間。もともと沖縄に来た時に何もないと思っていたが、自分には中学〜大学までの人的資産があった。決して、自分一人でやっているとは思っていない」と森下社長。

 FCの本格展開&初の県外進出の直前というタイミングでのアワード最優秀賞受賞となったが、同社は現在、第二の創業期といっても過言ではなく、業態としての変革もあると考えているそうだ。

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写真:アワードで最優秀賞に選ばれたことを販促面でも大いに活用。店名も含めて、徹底した差別化戦略をとっている


 例えば、沖縄は台風が多いことでも知られるが、昨年は台風24号の被害が甚大だったという。そんな中でも、停電地区が近い与那原などの店舗では、充電やトイレなどのスポットとして無料開放した。「いかに生活者に必要な存在になっていくか、また、フランチャイズオーナーに報いることを常に考えながら、まだまだ進みたい」と、さらなる事業の拡大を目指す森下社長であった。


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