コインランドリー情報誌 ランドリービジネスマガジン LBM

国内唯一無二のコインランドリービジネス情報誌




REPORT:コインランドリーで広がり見せる「香りの空間演出」Prolitec with AirQ、店舗のイメージを一瞬で決める認知強化・差別化戦略のツール



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写真:ランドリープレス海老津店

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写真:ランドロマット・グリーンデイズ

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写真:クリーンせいやコスタ行橋店

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写真:クリーンせいや北泉店



 今、五感の中でも記憶に直結する〝嗅覚〟に訴えるマーケティング手法が店舗の認知強化や集客において、注目を浴びている。米国シアトルに本社を持つProlitec(プロリテック)社の芳香サービス「Prolitec with AirQ」(以下、AirQ)の日本総代理店であり、いわば「香りの空間演出」とも称されるこのトレンドの仕掛け人として、月額10,000円前後でリース可能なディフューザーを全国で15,000台以上設置してきた実績を持つ㈱アントレックス(東京都新宿区)は、70種類以上の中から空間にマッチした香りをサービス業の最前線に提供し、高い評価を得ている。その同社の全国的な販売網の中で、コインランドリー及びクリーニング業界を中心に販売代理店を務めている、マルソー産業㈱(福岡県北九州市)によると、近年は洗濯機のニオイ対策や増加する競合店との差別化戦略・認知強化の一環として、コインランドリーにおける導入が大きな広がりを見せているということで、本誌は福岡県と大分県にある「AirQ」を導入した3店舗のコインランドリーを訪問し、「香りの空間演出」を取材した。



「お客の記憶に残る『何か』が欲しい」

——福岡・ランドリープレス海老津店

 多くのお店で培ってきた繁盛店のノウハウを盛り込んだオシャレな店づくりが業界で高く評価されている㈱アスファクト ランドリープレス事業部(本社・福岡県福岡市)。同社は100近くものオーナー店を作っているほか、福岡と東京・神奈川でクリーニング&コインランドリーの直営を30店舗運営しているが、その直営店の一つである「ランドリープレス海老津店」(福岡県遠賀郡岡垣町)は同社の三好康博専務が「自分がイメージするお店をやってみたい!」と、オーナーに名乗り出て、2017年12月25日、クリスマスの日にオープンしたお店だ。

 三好専務が考えたお店のコンセプトは、ズバリ「森の図書館」。木のぬくもりを感じられる空間に本を沢山置き、訪れたお客が読書をしながらゆったりとした時間を過ごしてほしいというもの。回転率を重視して機械を多く設置…という考えもあったそうだが、海老津地区は年配者も多い。ゆったり過ごせる空間は、そんな年配の人たちに向けて用意されたものだった。

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写真:ランドリープレス海老津店、「森の図書館」をイメージした店内。写真内、向かって右側に休憩スペースを用意している


 しかし、オープン当初の一年間は三好専務の狙い通り、年配客が多かったが、徐々に「店内がオシャレ!」、「お店に入るといい香りがする!」という若いお客も男女問わず増えてきたという。嬉しい誤算だった。

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写真:︎アスファクトの専務にして、海老津店のオーナーを務める三好康博氏


 この「いい香り」の正体は「AirQ」。海老津店に関して「お店に入ったときにお客様の記憶に残る『何か』が欲しい」と考えていた三好専務は、以前同社のとある店舗で試験的に導入し、すぐにお客から「このお店、何かいい香りがしますね」という意見が続出した「AirQ」を海老津店に設置していたのだ。気になる香りは、設置に携わったマルソー産業に対して「甘ったるくなく、森の図書館にマッチした柑橘系のスッキリした香り」というざっくりとしたイメージを伝えたところ、70種類以上の香りの中から、即座に「フレッシュクリーン」をオススメされたという。「目に見える売上作りにはならないが、お客様にちょっとした感動を与えることができる。クリーニングの受付スタッフにとっては、お客様との会話のきっかけにもなる」と、三好専務は香りの空間演出への想いを口にしていた。今は、「いい香りがするコインランドリー」として周辺に住むお客へのお店の認知が着実に進んでいるようだ。

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写真:ディフューザーは黒と白の2種類から選べる

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写真:書籍や店内を彩る小物インテリア


「店舗のデザインに合わせ、香りでイメージ戦略を」

——大分・Laundromat Green Days

 1973年創業のクリーニング機材商、㈱アダチ(大分県別府市)では、「コインランドリーをやりたい!」というオーナーに対して、ランドリー機器の販売や、開業及び経営サポートを行っているが、その傍ら、7年前の2012年より直営店のコインランドリーを経営していた。

 当初は周辺で唯一のコインとして、順調な売上を記録していたが、2〜3年前より、近隣に競合店が増え始め、昨年その数は「8店舗」に。当然ながら、各店にお客が分散し、売上は減少。2018年、同社の安達茂社長は「洗いはもちろん、決済方法もキャッシュレス対応の最新機種に変更し、コイン経営を検討している方に提案できるような成功モデル店舗にしたい」と今風のオシャレなコインへのリニューアルを決意した。

 新たな店舗「Laundromat Green Days(ランドロマット・グリーンデイズ)」のオープンに際し、意識したのは30代から40代の女性。コインの来店客の8割を占めるとも言われている女性のうち、特に家事に追われて忙しい主婦や、子育て中のママをターゲットとし、彼女たちが来店しやすい店舗デザインを心掛け、そして見た目だけでなく、嗅覚にも訴えるイメージ戦略として、「AirQ」を設置した。香りは、「さわやかなそよ風を連想させる香り」として安達社長が迷いなく選んだ「クリスプブリーズ」。リニューアル前の6年間、毎日欠かさず清掃を行っていた同社の安達興洋会長は現在のお店について「6年間で一度も見かけなかったような若い女性のお客様が増えてきた」と話していて、周辺への認知も広がり売上も回復傾向にあるそうだ。

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写真:ランドロマット・グリーンデイズ

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写真:コンパクトな店舗だが、休憩スペースもしっかり確保

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写真:グリーンデイズを運営しているアダチの安達茂社長


 安達社長は「開業を希望する人は、どんどんお店に来て欲しい」と話す。香りの空間演出だけでなく、先述のキャッシュレス対応最新機種や集中精算システムも設置したモデル店舗として、開業希望者に売上や客層などのデータなどを惜しみなく開示していく。「大分県内にもオシャレで便利なコインがもっと増えれば嬉しい」という熱い思いが、グリーンデイズに込められているのだ。

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写真:店内のデザインに合わせてオシャレな時計を設置。照明は鎖で吊るしている


「スタッフにも快適な空間で過ごしてほしい」

——福岡・クリーンせいや

 2018年、既存のコインランドリー2店舗に「AirQ」を導入したのは㈲クリーンせいや(福岡県行橋市)。2店舗とも、メイン事業であるクリーニング店が併設され、クリーニングの受付にはスタッフが常駐しており、同社の渡邊克紀社長は、お客だけでなく、日々の業務をこなすスタッフにも快適な空間で過ごしてほしいという考えから、香りのサービスを採り入れることに決めたそうだ。香りはランドリープレス海老津店と同じ「フレッシュクリーン」。

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写真:ショッピングモールの一角にある、クリーンせいやコスタ行橋店。写真中央の上部に、黒のディフューザーを設置。空調に乗って店内に香りが広がっていく

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写真:クリーンせいやの渡邊克紀社長。「『AirQ』は単なる機械ではなく私たちの理念を成し遂げるための一員です」と語る


 スタッフに快適な空間で過ごしてほしいという考えには、頑張ってくれていることへの感謝の気持ちと「自分たちのサービスを、誇りを持って提供してほしい」との想いが込められている。渡邊社長は「どんなにお店を綺麗にしても、ランドリー特有のニオイが店内に広まっている状況では、誇りを持ってクリーンせいやのサービスを提供することはできない。まずは、そこで働くスタッフたちに店内の快適さを感じてもらうことで、初めてお客様に誇りを持ってサービスを提供できる。それがお客様の満足に繋がる」と考えているのだ。スタッフからは「(始業時に香りを感じると)接客のスイッチが入る」、「業務に追われる中で、ほんのりと香りを感じたときに、『よし、頑張ろう』という気持ちになれる」と好評の声が挙がっているという。香りの粒子は非常に微細で、衣類の繊維を通り抜けるため、クリーニングの受付にある、引き取り待ちの衣類に香りが染み付く心配はないという。

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写真:フレッシュクリーンの香りを解説するPOP。ランドリープレス、グリーンデイズにも掲出されていた

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写真:衣類のリサイクル窓口


 また、2店舗のうちの一つである「クリーンせいや北泉店」は、北九州市が実施している古着を集めて自動車部品として再生する事業に協力しており、お客が着なくなった衣類を回収するための「衣類のリサイクル窓口」を設置していることから、「AirQ」導入には「古着=汚いというイメージを持たれないように」という側面もあるそうだ。



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