コインランドリー情報誌 ランドリービジネスマガジン LBM

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KEY WORD〔女性専用〕:マルシェに女性専用のコインランドリーを併設、スーパーマーケットが取り組む業態転換


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マルシェと併設の店

 近年、コインランドリーの出店形態として、カフェやコンビニなどとの「併設店」がトレンドとなっているが、2018年12月、東京・国立市JR中央線国立駅から徒歩10分の地に誕生したのは地場の新鮮な野菜や果物などが集まったマルシェやベーカリー、デリカデッセン(=惣菜販売店)、イートインスペースなどの複合店「La SaCuLa(ラ・サクラ)」と併設の女性専用コインランドリー「Blanche(ブランシェ)」だ。

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写真:ラ・サクラ

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写真:ブランシェ。今後同様の形態で展開していくための〝テスト店〟の役割も担う


 運営しているのは㈱Saeki PLUS(さえきプラス)。同社は、東京、埼玉、茨城、千葉、山梨、静岡、島根、鳥取でスーパーマーケットを50店舗展開し、今年創業40周年を迎えた㈱さえきセルバホールディングス(本社・東京都国立市)の子会社で、ラ・サクラとブランシェの立ち上げに際して昨年10月に設立されたばかりの新しい会社である。同店は元々、グループの別会社が運営していたスーパーマーケット「さえき富士見通り店」であったが、近年、大手の台頭で中小規模店の淘汰が進む厳しいスーパー業界で新たなチャレンジと、世の中の消費シフト(モノ消費→コト消費)に順応していくため、業態転換を決断し、2018年7月に一旦閉店。5か月の期間を経て、ラ・サクラに生まれ変わった。

 では、どのようなお店なのか。一般的なスーパーとは大きく異なる点として挙げられるのが、売り場面積の半分以上を占める、その場で調理された約100種類の惣菜・スープ・カレーなどを揃えた「デリカデッセン」と本格石窯で焼き上げたピザや焼き立てのホットサンドなど約50種類を揃えた「ベーカリー」だ。また、購入したものを食べることができる37席のイートインスペースは「同じ広さのスーパーでも、これほど席数は確保したイートインはないのでは」と同店。コーヒーやジュースなどのソフトドリンクだけでなく、ワインやビールもその場で飲める。そして生鮮食品を購入できるマルシェがある。さらに、お昼時は惣菜の「出来立て」を提供するサービスなども実施している。まさに、ただ買い物に行くスーパーではなく、店内で過ごす時間をお客に楽しんでもらうための空間だ。同店は「お客様に対してはあえて『スーパーマーケット』という言葉は使用しておらず、『マルシェ』、『デリカレストラン』という表現をさせて頂いております」と述べていた。

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写真:デリカデッセン。平日の昼間は、ランチのためにサラリーマンやOLも多く利用する。その際、写真右奥で提供しているカレーやスープはあっという間に売り切れることも。ちなみに惣菜の一番人気は、クルミ入りのメンチカツとのこと

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写真:ベーカリー。取材日は休日の午後で若干品数を押さえていたが、こちらも平日のお昼時には約50種類のパンを求めて多くのお客が訪れる

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写真:イートインスペース。昼間は「ママ会」、平日の夜は、デリカデッセンで購入した惣菜をおつまみにサラリーマンの「飲み会」が繰り広げられる!「一般的なスーパーの光景ではないです(笑)」とラ・サクラのスタッフ


 そのラ・サクラに併設したのが、女性専用のコインランドリー「ブランシェ」。ラ・サクラの構想段階で、さえきプラス社内では「他のスーパーとの差別化には、食品販売だけではない、プラスアルファが必要。違った収益の柱も作りたい」という声が挙がっており、様々なサービスを模索する中で、出店ラッシュや利用者数の増加といった、近年のコインブームに着目。「コンビニやカフェで併設が可能なら、マルシェでもできるはず」として、プラスアルファのサービスに、コインが選ばれた。

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写真:イートインスペースの隣は、コインへの通用口。スタッフによる巡回で使用される。お客の通り抜けはできない(コイン側からの通行は可能)



 実はラ・サクラには「女性に優しい店舗」というコンセプトもあり、スタッフも女性中心。そのコンセプトに則して、ブランシェは安心して利用してもらえるよう「女性専用」となっている。

 近隣には、男女来店可能なコインが1店舗あるためオープン前は「女性専用」が、どっちに転ぶか不安だったが、安心して利用してもらえるよう、ラ・サクラのスタッフによる1時間に1回の巡回と監視カメラの定期的な確認を営業時間(ブランシェ、ラ・サクラともに8時から22時まで)内は欠かさず実施。「今のところ、日本語が読めない外国の男性が誤って利用してしまったことはありましたが、それ以外は特に問題なく、安心してご利用頂いております」ということで、売上もオープン以降前月超えが続いて好調。「女性専用なので安心」といった声は、実施しているお客様アンケートの内容としても多いそうで、安心して利用してもらうための取り組みが周辺に住む女性の心をしっかり掴む形となった。

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写真:洗濯乾燥機の特大が1台、大型が2台、中型が1台、14㎏乾燥機が4台、靴洗い機が1台。洗乾、乾燥機はスマホアプリでの操作も可能。店内のQRコードからダウンロードできる。稼働状況や残り時間の確認なども可能。


 昨今は共働き家庭の女性や子育てに忙しいママなどに、家事の時短として支持されることが多いコインだが、ブランシェはこれらの層に加えて、周辺には一橋大学東京女子体育大学などがあることから、単身住まいの女子大生の利用や、高齢者が乾燥機使用を目的に来店するケースも多く(洗濯物を干して取り込む作業が大変との理由で)、ブランシェには幅広い年代の女性が集まっているそうだ。

 ラ・サクラへの相乗効果は「まだまだ」だというが、コイン単体でみると、オープン当初は中型の洗濯乾燥機で衣類を洗うケースが目立ったが、最近は大型の洗濯乾燥機で布団や毛布を洗うお客様が増えてきており、「最初はブランシェの存在すら知らなかったお客が、利用を重ねるごとに新しい使い道を覚えていくところに、コインの将来性を大いに感じています」と述べるなど、新たな収益の柱としての手応えは確実に掴んでいるようだ。


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