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REPORT:Jabba Ring 北海道札幌市/初月売上10万円から8年かけて最優秀賞店舗へ・〝二度目の正直〟で掴んだ栄冠


第5回コインランドリー店アワード【最優秀賞】受賞店

 2020年のコインランドリー店アワードで、見事最優秀賞に輝いたのは、一見するとコインランドリーだが、利用客に代わって洗濯から乾燥までの一連の工程をスタッフが行う、通称「アラワサッタ」サービスを展開する北海道札幌市のJabba Ring(ジャバリン、運営=㈱ライトン、竹内康社長)だった。LBM11号では海渡産業㈱のユーザーとして登場したが、当時は2020年4月の新型コロナウイルスによる緊急事態宣言下だったことからオンラインでの取材。時が経ち10月、今度は最優秀賞受賞店舗として、初めて現地を訪問し取材した。


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写真:Jabba Ring本店

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写真:最優秀賞の賞状とトロフィー

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写真:お店の受付台に受賞結果を掲出していた

f:id:murakamihjm:20201223163841p:plain写真:竹内康社長



 同社のサービスを簡単におさらいすると、①コインランドリー、②洗濯代行、③クリーニング(水洗いとシミ抜きのみ、ドライ品とアイロンがけが必要な水洗い(Yシャツなど)は外注)、④コインランドリーの利用料金で洗濯から乾燥までの一連の工程をスタッフが行うアラワサッタのサービスがあり、竹内社長をはじめ、クリーニング師の資格を持つ5名のスタッフが、アイテムやお客の要望をもとに①〜④のいずれかを提案する。コインランドリーは店内に洗濯機、洗濯乾燥機があり利用客自ら操作し、洗濯代行、クリーニング、アラワサッタはバックヤードにある工場でスタッフが処理を行う。中でも特徴的なアラワサッタは〝失敗しない洗濯〟のために生まれたサービスであることから、アイテムの中心は家庭で洗えず、コインランドリーでの洗濯や乾燥が難しい布団。アラワサッタの利用率が全体の8割とのことで、利用客からは『布団などをスタッフが洗ってくれるお店』として認知されている。


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写真:コインランドリースペースは、アラワサッタを認知させるための「呼び水」という位置づけ。新規客のほとんどが2回目以降はアラワサッタを利用するという



 創業は2012年で、元々は札幌市内の別の場所で営業していたが、2020年2月に現在の中央区に移転し、リニューアルオープン。移転は、東京オリンピックを目前に控えて民泊施設の開業ラッシュが起こり、地元のリネン業者も受けきれなくなっていて「ジャバリンさんで民泊のリネンをやってほしい」という依頼が多かったが、以前の工場では処理能力に限界があったため。より多くの機械を設置することができる工場物件を2年かけて探していたところ、現在の元板金工場の跡地にたどり着いた。残念ながら、リニューアルオープンの一週間後に北海道独自の緊急事態宣言が発出されたのを機に民泊リネンの需要はパタッと止まってしまったが、布団はコロナ禍でも伸び続けていた。そのため、10月に新たな大型乾燥機2台を追加するなど、生産能力の拡大を進めている。同社は毎年30%の売上アップを続けているそうで、「今のペースだと3年後には現在の機械の台数だと処理しきれなくなるので、また次の局面を考えていかなくては」と、コロナの影響を全く感じさせなかった。


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写真:民泊のリネンの需要を見越して移転し、建設した工場。機械の増設も見据えた広めの坪数の敷地を確保している



 その竹内社長は大学時代に表面改質(物質の表面の性質を変える技術)を研究し、その後繊維メーカーで不織布を、化粧品原料メーカーで原料などを研究・開発してきたが、埼玉から北海道に移住し「洗濯代行をやりたい!」として、ジャバリンを開業。移住の理由は東日本大震災の後、「災害のない安全な土地で暮らしたい」と思ったことが理由(ただしその後、2018年に北海道でも大きな地震が発生し、苦笑いしていた)で、洗濯代行は「当時、Wash&Foldさんがスタートし、やりたいと思った。でもまだ、東京と神奈川だけだったので、『北海道は遠すぎて面倒みきれない』と断られてしまったので、自分でやろうと思った」という。

 当初から今のように「アラワサッタ」と大々的に銘打って利用客に代わって洗濯を行い、ガンガンと売上を伸ばしてきたのかというとそうではなく、「オープン直後はまったく売れなかった。初月の売上は10万円」という。来店客がたった1人の日もあり、初めて1万円札を見たのはオープンしてから3か月後。しかも、支払いではなく両替だったことは今でも忘れないそうだ。 


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写真:北海道弁が由来のサービス名



 開業するとき、一年間収入がなくても食べていける貯蓄を持って北海道にやって来たが、お店を維持するため、どんどんと貯蓄は切り崩していった。月60万円くらいの売上はあると開業前はメーカーなどから言われていたが、現実を目の当たりにし、「商売は甘くないことを実感した」と振り返る。

 風向きが変わったのは、暇な時間が多かったことから実践していたポスティングに偶然地元の新聞社の記者が興味を示したところから。今でこそ認知が進んできた洗濯代行も当時は珍しかったため、取材を受けて記事が掲載された。その際、記者から「新聞に載ると、2〜3か月後には新聞を見て反応したテレビ局が取材に来ますよ」と言われ、半信半疑だった竹内社長だが、その2か月後に本当にテレビ局の取材が入ったという。さらにその際、「一度テレビで取材すると、いろんな媒体が2か月ごとに取材に来ますよ」とテレビ局の関係者から言われ、それも的中。こうして、メディアに取り上げられるたびに視聴者が来店、さらに口コミで評判が広がり、軌道に乗ったという。

 創業時にお客から「自分で洗おうとしてみても洗って良いのか分からない」、「コインランドリーで洗ったら失敗した」といった声がとても多かったために生まれたのがアラワサッタだが、当初はこうしたサービス名はなく、命名されたのは移転時。その理由は、「利用客のイメージは『スタッフがなんでもやってくれるお店』というぼんやりしたものなので、サービス名を決めて、ブランディングし、認知度アップと価値を高めていきたかった」とのこと。今後YouTubeで、洗濯の豆知識やコツなどを配信していきたいそうで、それも含めた情報発信の際に「権威とかお墨付きみたいなものがあると説得力が違うし、それがないと、ただ一人で勝手に叫んでいるだけ」というのが、コインランドリーアワードエントリーの理由だった。そして、この受賞により「札幌のお店が日本一に輝いた」と地元で話題になり、メディアの取材も多く受けたそうだ。

 実は竹内社長、以前にもコインランドリーアワードにエントリーしたことがあり、その時は選外に終わったという。「前回はどんなサービスなのか分かりにくかったのかもしれない。今回はしっかりブランディングして臨んだ。それが良い結果に繋がったのでは」と〝二度目の正直〟で手にした賞の喜びを語っていた。



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